動向注目のヴァーナルとトーカ堂
全体的に好調な通販業界にあって、どちらかと言えばあまり景気の良い話が聞かれないのが、(株)ヴァーナル(福岡市博多区)と(株)トーカ堂(粕屋郡篠栗町)の2社。ヴァーナルに関しては、大田前代表が代表を辞任しただけではなく、売上高も減収の一途を辿っている。同社がスポンサーを務める女子プロゴルフトーナメントも来年の開催で終わり(同社サイドは否定)といった類の話も流れるなど、かつての勢いを感じられない状況となっており、新代表が就任した今期以降の巻き返しに注目が集まっている。
TV番組で真珠を販売させれば日本一かもしれないほど、巧みな話術が持ち味の「北さん」こと北義則氏が代表を務める(株)トーカ堂。現在は高級宝飾品のほか、家電製品やキッチン用品、健康食品まで幅広いジャンルの商品をTVショッピングなどを通じて販売している。業績はここ数年頭打ちの状況となっており、収益面も黒字ではあるものの低調推移が続いている。無借金経営と言われているが、企業体力のあるうちに営業面を含めた抜本的な改革が必要だろう。
また、ここ数年で同社が訴えられる裁判が数件発生しており、すでに和解となった案件もあるが、現在継続中の案件もある。これらは、基本的に同社からの支払いがなされないことから裁判にまで発展したものであるが、金銭的な面ではややルーズな一面も垣間見られる。
建設・不動産業と同じ官製不況は避けねばならない
このように、地場通販会社は各社独自の戦略で展開し、全体的には依然として堅調な推移となっている。今回取り上げた企業以外にも、青汁販売の(株)アネックス(福岡市博多区)や、エチケットサプリを扱う(株)健康の杜(福岡市中央区)、基礎化粧品を扱う(株)HRK(筑紫郡那珂川町)、ヘアケア商品を扱う(株)エモテント(福岡市博多区)など、今後は売上を伸ばしてきそうな通販会社も地場にはたくさんある。
しかし、将来を見据えると、業界を取り巻く環境は決して順風満帆ではない。とくに健康食品に関しては、厚生労働省が「4.13事務連絡」として通達を出したことで、業界は広告表現などをめぐって大混乱した。そのため、「血液サラサラ」のように消費者にも分かりやすいようなワードが使えなくなり、通販会社は結果的に伝えたいことがうまく伝えらず、現在も苦悩が続いている。さらに、金融庁の金融審議会などが検討を進めている「決済サービスの制度整備」では、通販の決済に利用されることが多い代引決済に過度の規制を課す方向で議論が進められていると言われている。
行政による、こうした現場を無視した規制一辺倒の対応は、建設・不動産業界が改正建築基準法の影響から大不況に突入していったように、通販業界も厳しい規制の煽りを受けて現在の好調さを失うことにもなりかねない。4兆円目前にまで拡大してきた通販市場のさらなる成長の芽を摘まないように、官民が一体となった業界発展に向けた努力が必要である。
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