9月19日に開かれた福岡空港調査連絡調整会議(国、福岡県、福岡市で構成)。同会議では、国から提示された現空港増設、新空港建設の2つの代表案を比較調査したステップ4の調査報告書を了解し、市民らへの説明会、意見聴取を行なうことを決定した。新聞などでは報道されていない点も含め、問題点を報告していきたい。
舞台はステップ4
ステップ4は9月下旬から始まり、12月下旬ごろには終了する。「福岡空港調査PI有識者委員会への実施報告書」を終えた後、関係行政機関である国、福岡県、福岡市による最終的な対応案が決定されることになっている。
またこれとは別に、当面の過密化対策として、誘導路を複線化することも決まった。国内線第1、第2ターミナルビルを現在の駐車場側に移設し、誘導路を複線化することで滑走路処理能力は年間約4,000回増えることになる。総工費は約340億円。工事実施日は未定という。
調査報告書は、増設案と新設案に対して15の比較評価を行ない、事業効率性の面で「利用者便益」(利用者側のメリット)と「供給者便益」(運営者側のメリット)を貨幣換算で示していることが特徴になっている。
報告書は、増設案と新設案のそれぞれの利点を、前者は空港アクセスの利便性と投資が少額、後者は24時間運用が可能であることと発着回数増加に対応できるとしている。
これまでの流れ(ステップ1~3)
これからステップ4の報告書を順次紹介していくが、初めにお断りしなければならないのは、PIというのはあくまでも、ここに示されている「増設」「新設」各代表案に対して市民等が意見を述べるだけであって、最終的な対応案(増設か新設か)を決定するのは国や県・市だということである。(その善し悪しは別にして)
●ステップ1では、「福岡空港の現状と課題」「空港能力」についてなどが検討された(2005.7~05.12)。
利用者は「直行便がある」「希望する時間に航空便がある」「空港まで早く到着できる」「航空運賃が安く利用できる」の4項目を重視しており、これらの項目で他空港より満足度が高い。課題として「建物の高さ制限や航空機の混雑などがあり」「年間滑走路処理 容量は14,5万回と見込まれ、余力があるものの運航に制約が生じはじめている」と報告されている。また「現空港敷地内での有効活用方策(平行誘導路二重化)を実施した場合は、処理容量が14,9万回なると見込まれ」ている。
●ステップ2では、「地域の将来像と福岡空港の役割」「将来の航空需要の予測」について検討された(06.7~06.12)。
そのなかで中心となったのは福岡空港の役割と「将来の需要予測」で、予測の根拠を問う意見などが多く寄せられたことは記憶に新しい。需要の予測では、「2010年代初期には、滑走路処理容量に余力がなくなり、混雑状況が拡大することで、需要に十分応えられなくなる」とまとめられた。
●ステップ3では、「将来需要への対応方策」「将来対応方策の評価の視点」がまとめられた(07.9~08.1)。
ここでは「将来需要への対応方策」として近隣空港との連携が議論されたが、「航空自由化の流れや需給逼迫緩和効果がわずかである」として退けられた(いわゆる北九州空港などとの機能分担・連携)。そこで対応策として「現空港における滑走路増設」と「新空港」がまとめられ、今年6月にはいわゆる現空港増設西側「かさ上げ」案が浮上してきた。さらにこれまでのステップを基に「5つの評価の視点」が設定された。
こうした経過をたどりながら、9月下旬からステップ4が始まることになった。
ステップ4で検討事項していくこと
9月下旬から始まるステップ4では、
滑走路処理容量の算定
将来対応方策の詳細検討と代表案の検討(滑走路増設案と新空港案)
将来対応方策の比較評価及び特徴の整理
将来の方向性選択のポイント
について市民意見交換会などを通じて意見を募集していくことになっている。
その後「福岡空港調査PI有識者委員会」へ実施報告書が提出され、そこでPIが適切に実施されているかどうかが判断され、調査の終了が承認されれば「福岡空港の総合的な調査」が終了したという手順になっている。前述の「福岡空港調査PI有識者委員会」は、どの方策を選択するのかの権限はなく、あくまでもPIがきちんと運用されたかどうかを議論する場なので、方策の是非を判断することはできないだ。
最終的な対応策を決定するのは、
国土交通省九州地方整備局(空港PT室)
国土交通省大阪航空局(空港企画調整課)
福岡県(空港対策局空港計画課)
福岡市(総務企画局空港将来方策担当)
という行政機関である。
とはいってもその部局の担当だけが決めるわけではなく、国の空港政策の如何と福岡県、福岡市の首長の動向が大きな判断要素になるが、市民が主張することが無駄にはならないだろう。国内や九州をとりまく情勢や足元の福岡から空港問題を論じ、意見をどしどしぶつけていくことで、市民こそ選択する権利をもっていることを示すことが可能だろう。
▲滑走路処理容量の各案の算定結果(増設4案と新空港案の比較)
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