こども病院問題、門外漢がなぜ市を擁護?
17日、福岡市内の一部の医師らがこども病院人工島移転に関する「賛成意見」をまとめ、会見まで開いた。意見書を起草し、会見をセットしたのは杉町桂蔵・九州中央病院院長である。残念ながら、意見書の内容や会見のスケジュールが新聞報道されたあと、つまり16日には、杉町院長が作成したとされる「記者会見のお知らせ」や「こども病院の重要性と整備場所に関する我々の意見(案)」と題する文書に名前を記された複数の医師らが、文書への連署や、会見出席に同意していなかったことが判明、ドタバタ劇が始まった。結局、会見の時間を変更した挙げ句、会見に出席したのは杉町院長ら九大第2外科出身の4名の医師だけだった。肝心の産科や、小児科の医師がいない意見表明にどれほどの意味があるのか、きわめて疑問である。何のための市役所擁護か、会見でもはっきりしないままだったという。
杉町院長が作成した意見書については、本稿の(上)で人工島のこども病院用地を3万ha以上とした根拠に疑問を呈したが、その内容にはまだまだおかしな点が残る。意見書は、現こども病院の「隣接地の買収は困難であり」と記すが、杉町院長は隣接地の買収が困難という情報をどのように確認したのであろう。隣接地の地権者も知らずに、こうした意見を公表することは、差し控えるべきではないだろうか。
さらに、退院前の子どもに、「公園で遊ばせることも治療の一環として必要」とするが、なぜ公園で遊ばせることが治療の一環なのかさっぱり分からない。市内の小児科医に聞いてみたが「医学的根拠はないですよ。こじつけでしかない。それなら、今のこども病院のそばには公園がないから、『治療の一環』が抜け落ちていることになってしまうよ。でも決してそんなことはないし、たくさんの子どもの命を救っているでしょう」とバッサリ。
ところで、杉町院長は人工島内の公園にセアカゴケグモが生息していることをご存知なのだろうか。ついでながら、セアカゴケグモに咬まれた場合、乳幼児や高齢者に限って重症化するという事実も合わせて記憶しておいてもらいたい。
杉町院長の意見書は、ことさら東区の小児医療施設が少ないことを説くが、こども病院は一部地域のための医療施設ではない。莫大な税金を投入する公的病院である。事実、福岡市が行なったインチキ作業ではあるが、人工島事業「検証・検討報告書」には、「こども病院・感染症センターは地域密着型の病院ではなく」と断定したうえで「全市及び市外から広く患者を受け入れており・・・以下略」
と記す(報告書70ページ)。決して東区だけの病院ではないことは福岡市が宣言しているではないか。
立派な肩書きをお持ちの先生方が、記者会見を開き意見書を公表したりすることは、それなりの社
会的地位や権威をお持ちであるだけに、何も知らない市民は公表された内容を鵜呑みにするということが考えられる。
産科・小児科医ではなく、いわば門外漢である外科の先生方が会見まで開き、こども病院人工島移転賛成を世論に訴えることに、憤りを感じるのは記者だけだろうか。この際、杉町院長らの言動は無責任だと断じておく。その意見書の内容に疑問点が多いだけになおさらである。
つづく
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