杉町圭蔵・九州中央病院院長ら一部の外科医らが、こども病院人工島移転に賛成の意見書をまとめ、記者会見まで開いた。杉町院長らの行動は個人的なものだとされるが、自身が院長を勤める病院を会見場に使うという行為は、病院の私物化ではないのだろうか。同病院の中にはこども病院人工島移転に公然と反対をしている医師も存在するのである。市民に訴える前に、ご自分の病院内の意見を統一すべきであろう。
　
　杉町院長がまとめた意見書については、本稿（上）と（中）で、いくつかの問題点を指摘してきた。最後に、更なる問題点を指摘しておきたい。意見書は、こども病院現地建て替えについて「工事費が高い（1.5倍）」と記す。何を根拠に工事費が高いといっているのか、おそらく市役所の資料そのままを「院長自身の意見」とされたのだろうが、データマックスニュースで報じてきたとおり、市役所が公表している工事費についての数字には何の根拠もない。民間業者に業務委託して、はじき出された工事費が85億5,000万円。市役所はこの数字に、何と42億8,000万円を水増し、工事費を128億3,000万円と公表した。根拠については「ゼネコンに聞いて1.5倍にした」という官製談合を肯定するかのような、とんでもない話となっている。現地建て替えには土地代がかからないが、人工島移転の場合、工事費とは別に、博多港開発（株）に対し50億円近くの用地購入費を支払うことを院長は見落としているのではないだろうか。要は現地立て替えが一番安いということだ。

　次に、杉町院長の意見書にある「400台以上の駐車場が取れる」という記述についてだが、当初の市の発表によると、駐車場は300台で職員用などについては考えていく、というものだった。何を根拠に400台以上が必要なのか、杉町院長の意見書からはすっぽり抜け落ちている。さらに、「救急患者搬送ためのヘリポートが整備できる」という点については、ヘリポートが人工島にしかできないということではなく、ついでに言えば人工島上空は福岡空港の「特別管制区」と呼ばれ、上空待機の機会が多いということも認識されるべきであろう。

　「交通のアクセスが良い」という記述には、真っ向から「間違いである」と反論させていただきたい。杉町院長の九州中央病院から、バス、電車、タクシー、そして救急車によるそれぞれの所要時間や料金を調べた上で自身の意見を公表すべきであろう。学者であるなら、実証したもの以外は公表すべきではなかろう。市役所のデータや意見を鵜呑みにして、会見まで開くというのは慎むべきである。
　夏休み期間中、人工島周辺の道路の混雑にはうんざりさせられるのが現実だし、今後、青果市場の移転で1万数千台、商業施設の誘致で数万台と、通行車両の数は増すばかりである。人工島に進入するには市内側からは2本の橋しかないのだ。しかも市内のはずれである人工島へのアクセスが良いはずがないだろう。杉町院長は自身の立場の重さ、会見をすることの意味、公表内容が社会に与える影響を総合的に考えるべきであった。将来、こどもの命に間違いがあったとき、杉町院長は責任が取れるのだろうか。専門外の立場とは言え、杉町院長は医師である。その良心に誓って、こども病院人工島移転賛成と言えるのか、もう一度考えていただきたい。

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