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増設か新空港か 福岡空港問題を検証(4)
行政
2008年10月22日 10:58

―事業効率性―

           【増設案】
A、費用と効果
 ・事業費は約2,000億円だが、引き続き借地料、環境対策費が必要。
 ・2032年時点で利用者便益は現行のアクセス利便性を維持することが可能であるため、新空港と比較して大きい。
 ・2032年時点で、供給者便益は借地料の支払いが続くことから、新空港と比較して小さい。発着回数に余力がないため、需要増加に応じた便益の幅は小さい。
B、概算費用
 ・約2,000億円
C、便益
 ・利用者便益は年間約450億円から530億円。供給者便益は年間約60億円から80億円。
D、実施の難易度
 ・拡張用地の確保が必要で用地買収などが難航すれば更なる期間を要する恐れがある。現空港を運用しながらの施工であり、工事実施に制約がかかる。

         【新設案】
A、費用と効果
 ・事業費は約9,200億円であり、借地料、環境対策費は不要。
 ・2032年時点で、利用者便益はアクセス利便性の低下による不利益が発生することから、増設案と比較して少ない。
 ・2032年時点で、供給者便益は借地料が不要となることから増設案より大きい。但し、発着回数に余力があることから、需要に応じて便益は増加する。
 ・空港跡地の利活用効果、高さ制限の緩和効果等が見込まれる。
B、概算費用
 ・約9,200億円
C、便益
 ・利用者便益は年間約230億円から460億円。供給者便益は年間約130億円から180億円。
 ・約62億円(環境対策費が不要となるため)
D、実施の難易度
 ・漁業補償やアクセス交通整備に伴う用地買収などが難航すれば更なる期間をy法する恐れがある。
 ・初期投資が多額となるため、資金調達や財政面での工夫が必要。
 ・冬季の高波浪対策が必要。


 ここで注目されるのは、利用者便益・供給者便益という言葉である。利用者便益とは、「旅行費用の低減や旅行時間の短縮などの効果を貨幣換算した」ものであり、供給者便益とは、「着陸料や地代等の収入から、飛行場管制業務に係る費用や維持管理費等の支出を差し引いたもの」であるという。

 では、この積算の根拠はなにかが問題である。10月1日の調整会議でも記者から質問が出されたが、当局から明確な回答はなかった。国の説明によれば、この便益は、あくまでも現空港との比較のために出したものであるとのこと。

 ちなみに2032年時点で現空港を維持していくと仮定すれば、32年時点で年間約450億円から600億円の「機会費用損失」が発生する、とはじき出している。「機会費用損失」とは、「福岡空港を利用したい利用者が利用できずに、他の空港や他の交通機関を利用せざるを得ないことによる」損失とされている。要するに現空港のままだったら年間約450億円から600億円の金額が他の空港に流出すると仮定しているが、その根拠も明らかにされていない。

 こうした数字はあくまでも、過去の日本経済の成長率などを土台にしてはじき出されたものでしかなく、願望も含めた数字に過ぎないのではないだろうか。


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