ニューズウィーク誌にて「ウォール街を炎上させた戦犯」「世界経済を大恐慌以来最大の混乱に陥れた張本人」とされた、前FRB議長のアラン・グリーンスパン氏。2007年に、推定800万ドル(当時で約99億円)という破格の出版契約金で執筆された『波乱の時代』のペーパーバッグ化に伴い、加筆された最終章のみを抜き出したものが本書である。
60ページにも満たないその中味で、グリーンスパン氏は世界経済危機の根源的要因と今後の見通しを論じている。信用収縮と悪化をもたらしたサブプライム・モーゲージ市場の混乱に対し、「信頼しうる経済対策が講じられたとはとてもいえない」(同書26p)ことに危機の深化の主因を見出した本書が米国の書店に並んだのは08年9月9日。2日前にフレディマックとファニーメイが公的管理下に置かれ、5日後にリーマンが破綻、というタイミングでの上梓は、何とも皮肉と言えよう。
この最終章だけで現在の「波乱」の全てが語られているわけではないが、グリーンスパン氏の言う「100年に一度の危機」の一旦を捉える上では、精読するに値する。少々想像力を豊かにして意地悪く読んでいくと、サブプライム問題の"戦犯”による自己弁護、あるいは開き直りとも取れる部分がチラリと見え隠れするのも、また一興だろうか。
「波乱の時代・特別版」(日本経済新聞出版社刊)
著者/アラン・グリーンスパン
訳/山岡洋一
価格/525円(税込)
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