衆議院投票日の最有力と言われた10月26日が過ぎた。麻生内閣が誕生した臨時国会冒頭解散、10月26日投票を新聞が報じ、その方向で決まるというのが大方の見方であった。事実、麻生首相自らも就任会見で「選挙に勝って初めて天命を果たす」と述べ、月刊誌上でも「早期解散」を明言していた。
しかし、就任早々米国発の金融危機が勃発。当初予定していた「早期解散」戦略は頓挫し、就任1カ月後の10月24日には「一番いい時を狙ってやる」と発言していたが、今なお時期について明言していない。麻生内閣発足後、支持率は低迷しており、首相の必死のパフォーマンスにも拘わらず、急激な上昇気配は見られない。
自民党の内部でも解散総選挙時期をめぐり、「金融危機で世界経済が悪化している時に選挙どころではない」と先送りを求める声がある一方、「先送りすれば来年度予算も年度内に成立せず、暫定予算に追い込まれて麻生政権は終わりだ。11月末には選挙ということになる」という観測もある。
政権転落恐れる自民
首相周辺でも「このまま選挙に突入したら自公は確実に政権から転げ落ちる」「良くても220議席。負ける選挙をするわけにはいかない」という悲鳴に近い声すらあがっている。一部週刊誌は「自民党は半減の150議席しか取れない」とも伝えた。こうした状況の中でいつ解散総選挙に踏み切るか、脱出口を見出せない、それが麻生首相の実情ではないだろうか。
首相の戦略に、ゆらぎとも言うべき事態をもたらしているのは世界的な金融危機ばかりではない。年金改ざん問題、官僚の腐敗、経済政策の無策。安倍、福田と2代にわたる政権投げ出しに見られる自民党政権の「正統性」への疑問も根底にある。それは、総選挙の洗礼を受けていない政権が3代も続いていることだ。
自民党はいつまで政権のたらい回しをやるのか。権力にしがみつく姿勢に、国民は疑問を抱いている。農村部でさえ「民主党にやらせて、それで駄目なら又もとに戻ればいい」という声が聞こえてくる。それは、農村部が政府の打ち出す政策から恩恵に預かっていないということだ。
小泉―竹中路線の経済政策による格差拡大で、地方が破壊されていることを有権者は身をもって感じている。政権交代を求める声は、「民主党への期待」と言うよりも、むしろ自民党に飽き飽きして「変化」を求めている、というのが本心に近いかもしれない。
つづく
※記事へのご意見はこちら