目算はずれ
こうした局面のなかで民主党は、「解散・総選挙」を自民党に迫る戦術をとっている。新テロ対策特別措置法改正案に対しては、昨年の徹底審議とは打って変わって今回は2日間の委員会審議で衆議院通過を認めた。こうした対応に首をかしげる議論が起こっている。
国民新党・亀井静香代表代行は22日の記者会見で「国民のために戦わなければ、選挙をやっても勝てない。大変なしっぺ返しを受ける」と指摘し、解散のニンジンをぶら下げられて与党に協力している民主党を批判。首相との党首討論に応じない小沢一郎民主党代表に対しても「党首討論に出るのは当然だ」と批判している。
こうした批判や、麻生首相がいつまでたっても解散を明言せず先送りしていることを受け、民主党の対応にも変化が出てきた。
政府・与党が月内成立を目指す金融機能強化法改正案への対応をめぐり、民主党は対応を決めかねているようだ。幹部は「解散先送りの事態が来れば、方針を変えることは十分あり得る」と徹底審議を行ない、力ずくで首相を解散に追い込んでいく方針だが、党内には「解散ならば月内成立」と解散を優先させる声もある。
与党の立場からすれば、法案が成立すれば、それだけ麻生内閣の政策アピールにつながる。民主党が対決に転じるとすれば「政局優先」との批判もできる。いずれにしても民主党は対応が難しい局面にある。
与党からは「予算や法案が成立すれば何も解散を急ぐ理由はない」との声もあり、解散が先延ばしになることは十分にありえる。
民主党よ、新たな挑戦意欲を
「国民生活が第一」として、永田町の論理ではなく国民生活の視点から政権交代を主張してきた民主党。現局面は、戦略の建て直しを民主党に求めている。
昨年の参院選の民意は、必ずしも民主党の理念と政策に賛同し「政権交代」への波が起こったとは、必ずしも言えない。消去法で「自民党はだめだ」からと民主党が勝ったに過ぎない。
政権交代を実現するには、民主党に政権を担うには、頼りなさを感じている国民も少なくない。そうしたことが払拭されなければ、参院選で起きた波は大波とはならないのではないか。
現に、民主党議員の中からも「風」が収まりつつあると危機的な声すら聞かれる。同党にとっての問題は、国民の政治への怒りや要望を、政権交代のエネルギーに高めていく戦略と問題意識、そして情熱があるかどうかだろう。
1993年の非自民連立政権の細川・羽田内閣で下野した自民党は「禁じ手」とも言うべき村山連立内閣で政権に復帰した。失った権力を取り戻すために自民党はあらゆる手段を用い、取り返した。良し悪しは別にして、こうしたエネルギーに満ちた政治の「戦い」抜きには、政権交代はありえないのではないのか。
国民の目に焼付くような行動を起こしていくことが問われていよう。でなければ来るべき総選挙では、自民党のみならず、民主党も愛想を尽かされるだろう。(AKIRA)
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