(株)データ・マックスではこのたび、九州地区の主要通信販売業者を調査し、レポートとしてまとめた。対前年比で増収となっている企業が半数を超えるなど、依然として通販業界は活況を呈している。しかし、「4.13事務連絡」(※)が業界に多大な被害をもたらしたように、今後もこれまで通りに推移するかは不透明である。今回は、九州を代表する通販業者の現状をレポートしながら、今後の動向を占う。
4兆円目前の通販市場
通販業者の多くが加盟する社団法人日本通信販売協会によると、07年度の通販市場全体の売上高は対前年比で約2,000億円の増加となる推計3兆8,800億円にのぼり、過去最高の数字を記録した。10年前の1998年度の統計では約2兆1,800億円であったことから、インターネットなどの普及によって急速に市場が拡大していることが分かる。また、弊社が九州地区の通販業者を対象に行なった調査結果でも、増収基調で推移している企業が大半であり、依然として伸び盛りの業界であると言えるだろう。
売上高トップを独走するジャパネットたかた
九州地区における通販業者の代表格となるのが、今や全国区の企業となっている(株)ジャパネットたかた(長崎県佐世保市)。 田明社長による芸能人顔負けの独特のトークに魅了され、同社の商品を思わず注文した消費者も多いだろう。自前のスタジオから全国に流されるTV番組は、人気番組の1つといっても過言ではなく、売上高も順調に伸びている。前期では約1,161億円と、九州地区の通販業者のトップを独走している状況だ。今後の課題としては、やはりポスト社長だろう。 田社長があまりにも有名になりすぎたことで、ナンバー2、ナンバー3の影が薄くなっているのは否めない。
続いて、売上高2位の企業は、こちらも全国的に高い知名度を誇る(株)やずや(福岡市南区)。「熟成やずやの香酢」「発芽十六雑穀」など、人気の高い商品のラインナップで、ピーク時の2006年3月期には約407億円の売上高を計上した。しかし、同年7月に「熟成やずやの香酢」の広告表示で公正取引委員会より指導を受けたことで顧客離れなどもあり、売上高は減少。ここ2期は連続して減収が続き、前期では300億円を割り込む結果となっている。同社関係者は「売上重視ではない」と強気のコメントだが、前述の広告表示問題は、多くの消費者が「やずやだけは信じていたのに」というなかで、大きな信用失墜になったことは間違いない。
今後は、来年4月に現社長の矢頭美世子氏が会長となり、子息で現専務の矢頭徹氏が社長となる新体制で経営再建に臨むことになる。現在でも、すでに専務自ら実務レベルでの舵取りに積極的に携わっているが、売上回復や新商品の開発など、豊富な資金力をバックにどのようなかたちで3代目社長としての「やずや」カラーを打ち出していくか注目される。
大金を握ったエバーライフ・創業者
今年上期に通販業界で話題となった企業が売上高4位の(株)エバーライフ(福岡市中央区)。同社最大のヒット商品となったヒアルロン酸配合の「皇潤」は、大物俳優を使ったTVCMなどで一躍世間に認知され、瞬く間に400万箱を超える販売を記録した。この結果、売上高は大幅な伸びを見せ、前期では200億円を突破。収益面では、売上トップのジャパネットたかたを抜いて、36億円の最終利益を計上している。さらに驚くべきことは、売上高は対前年比で約67億円の増収となっているが、原価に関しては5億円程度しか増加していない点。通販会社の高い粗利益率がこのことからも分かるだろう。
同社が注目を浴びたのは、創業者の井康彦氏が保有していた同社株を08年3月に売却したことである。これにより、井氏は多額の売却益を得たと言われており、同業者からも「羨ましい」といった声が上がるなど、上期の通販業界の話題を独占した。
(※)「4.13事務連絡」とは・・・
健康食品の販売名について効能効果を用いた製品の改善を要請する事務連絡を、厚生労働省の広告専門官が都道府県の各担当官に宛てた文書のこと。これにより、「サラサラ」や「グッスリ」といった用語を使った商品は、品名を変えたり販売終了となるなど業界は大混乱した。
つづく