06年の福岡市長選で、吉田福岡市長名義で借用し、民主県連が使用した暴力団関連物件に関し、関係者が説明してきた「賃料」について、実際には支払いが行なわれていない可能性が浮上している。支払いが行なわれていなければ、事務所提供という形で、民主県連もしくは市長に対する便宜供与がなされたことになる。
29日に公開された、県選管届け出の07年分政治資金収支報告によれば、吉田市長の関連政治団体「吉田ひろし後援会」と「ふくおかFANクラブ」に対しては、民主党福岡県連からの寄付等による入金はない。県連の終始報告書にも両団体への支出に関する記載がないことが分かっている。また、民主県連が吉田市長個人に寄付をしたとする記載もなかった。
吉田市長名義で賃貸契約が結ばれ、市長選翌年の07年1月になって精算したとしてきた県連幹部の説明は、収支報告書からは確認できない。吉田市長側は市長選が行なわれた06年に120万円(家賃1か月分40万円、敷金40万円、保証金40万円)を支払い、市長側に戻ったとされる保証金分(40万円)を差し引いた金額(80万円)を、県連が翌年1月に吉田市長側に支払ったというのがこれまでの説明だった。
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ちなみに、06年市長選時の吉田宏候補の「選挙運動費用収支報告」にも、問題のビルの家賃等は計上されておらず、前述・ふたつの関連政治団体からも事務所費として計上された形跡はない。
「ふくおかFANクラブ」の事務所費は16,000円にすぎず、「吉田ひろし後援会」の事務所費は3,763,355円計上されているものの選挙事務所費から推定される事務所家賃1日単価24,500円から計算すると、入居していた日数(06年8月から12月まで)からして不足するくらいである。
07年の両団体の事務所費は、後援会が196,800円、FANクラブが0円である。問題のビルの賃料等は市長側の政治団体や選挙資金とは無縁ということになる。
また、民主県連の収支報告に吉田市長個人への寄附等の支出がない以上、支払いは民主県連が直接行なったことになる。この場合、「市長選の選対として使った」という民主県連の複数の幹部の話と、当時の使用実態からして、本来なら物件の家賃等は政治活動費の中の選挙関係費に計上すべきものであろう。しかし、県連の収支報告からは該当する記載の確認が取れていない。
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考えられるとすれば経常経費の中の「事務所費」として処理したとしか考えられない。しかし、物件を借りる際の契約上の名義人は「吉田宏」個人であったことが、明らかとなっており、県連は吉田氏個人に成り代わって支払いをおこなった事になる。この場合は吉田市長個人に対する寄附であり、県連の経常経費として処理すべきものではないと考えられる。
問題の物件の契約上の名義人が吉田市長自身であったことは、4月の市長定例会見で、吉田市長自身が認めており、県連の資金処理の不可解さが際立っていた。これまで、契約書や家賃等の領収書などの公開にも応じておらず、実際に家賃等の支払いが行なわれたかどうか、まったく証明がなされていなかった。今回の収支報告書公開で、県連幹部や市長陣営関係者が説明してきたことが、事実関係と違うことが分った形。
当時の選対関係者から「実は金なんか払ってなかったはず。ビルのオーナーの好意で借りたと聞いていた。(暴力団関連企業からの賃借が)問題になって、収支報告の公開が何ヶ月も先になる平成19年(07年)に入って処理した形を取っただけ。民主党県連幹部と吉田選対の幹部が話し合って方針を決めた。」との情報も寄せられている。市長、そして民主党県連は公式に関係書類を提示した上での説明をすべきであろう。