◆安倍以上の「側近内閣」
「ZOY首相」――麻生首相は官邸詰め記者からそう呼ばれている。福田前首相は”KY(空気が読めない)”といわれたが、麻生氏の場合、「全部(Z)、オレが(O),やる(Y)」が口癖なのだ。
ワンマン体質は政権を支える顔ぶれにも現れている。麻生首相には派内に5人の側近がいる。それを順番に重要ポストに起用した。松本純氏と鴻池祥肇氏という衆参2人の官房副長官が側近1位と2位、ほぼ毎日、夕食はどちらかとホテルで食べ、その後、シガーバーでくつろぐ。3位が「森コンツェルン」の御曹司である森英介・法相、4位が山口俊一・首相補佐官、5番目は岩屋毅・衆院文部科学委員長だ。
「ここまで露骨にお気に入りを周りに集めるとは」
長年、麻生氏と行動をともにしてきた派閥議員も驚く”情実人事”だった。
女房役のはずの河村建夫・官房長官や細田幹事長は外様であり、「総理は官房長官や幹事長には何も相談せず、取り巻きはイエスマンばかり。全部自分で決めるから、誰も先行きが読めない」と、自民党役員はお手上げの様子。日銀の副総裁候補の人選でも、麻生首相は山口広秀・理事を起用することを誰にも相談しなかった。
それだけに、解散時期を勝手に決められることには激しく反発する。
自民党総裁選の終盤、党内では古賀誠・選対委員長を中心に「10月3日解散、11月2日投票」の選挙日程が固まり、公明党とも合意していた。朝日新聞も〈来月3日解散へ〉と、与党内で合意されたと報じた。
だが、麻生氏は首相に就任すると、「解散権はオレにある。そんな日程、誰がきめたんだ」
と、選挙日程をひっくり返してしまった。折からの株価急落、世界的な金融破綻で「経済対策優先」を口実にされると誰も文句をいえない。
森派幹部がうんざりした顔でこういう。「今の国会のねじれ状況では機動的な政策は打ち出せない。今後の危機対応のためにも早く選挙をして決着をつけるしかない。しかし、麻生は、”経済はオレにまかせろ”と根拠のない自信を持っているし、あまのじゃくだから犬猿の仲の古賀が言った日程や大嫌いな朝日新聞が決め打ちした日程では絶対選挙をやりたがらない。だから、与党幹部たちは気を使って必ず選挙日程に言及するときには”解散権は総理にあるが”と枕詞を置くことにした。子どもみたいで扱いにくい」
金融危機の真っ只中というのに、この国の中枢では、与党幹部たちが”おぼっちゃん首相”に機嫌を取ることに汲々としているのだから、まともな危機回避策など打てるはずもない。
つづく