破綻懸念は広がる
こうした枠組み整備に向けた動きが始まったが、それ以上に日本の株価の下落も経営を直撃する。
野村証券金融経済研究所がまとめたレポートによると、9月末時点で保有株の含み損を考慮すると中核的自己資本(Tier1)が4%すれすれになるところが、東和銀行(前橋市)、豊和銀行(大分市)などで発生する。劣後債などTier2も含めれば国内行として活動できる自己資本比率4%は達成できそうだが、調査時点の9月末からさらに株価が下がっているので予断を許さない。国際ルールである自己資本規制の遵守がままならないのだ。
銀行間取引の短期金融市場では、大手行の新生銀行やあおぞら銀行さえも資金を取りにくくなっている。「あの2行に無担保コールを出すところは少ない。国債を担保にしたレポ取引でないと資金を融通しにくい」と、フランス系銀行の東京支店幹部は打ち明ける。
あおぞら銀行の大株主である投資ファンドのサーベラスは、米国で経営危機に陥るクライスラーの大株主でもある。サーベラスが窮地に陥っていることは、当のサーベラス関係者も実はしぶしぶ認めている。関係者の間では、新生、あおぞらの再編に向けた動きが本格化すると予測する向きが少なくない。金融危機は日本でも広がりつつある。
民主党の金融政策通の参院議員は「北関東、九州で公的資金を入れないといけない銀行が出てくる」とささやく。先の自民党若手参院議員は「東北にも1行ある」と打ち明ける。全銀協や地銀協がにわかに時価会計の凍結や自己資本規制の緩和を打ち出した背景には、慄然とする地域金融機関の破綻懸念があるのだ。