福岡県田川市の食品製造販売会社「ヤノフーズ(株)」のあんこ偽装問題について、連日弊社のNET-IBニュースで、事件の背景も含め独走スクープを続けてきた。
25日(土)夕、在京キー局のTBSが、同局の看板番組「報道特集」でこの問題について独自取材の内容を特集した。事前にヤノフーズ製「あんこ」の成分分析をするなど、用意周到にヤノフーズ側を追い詰める手法は、さすがと思わせるものがあった。
しかし、同問題を最初にスクープした弊社取材班には、割り切れないものが残る。それは、TBSがこの問題について今月16日にはすでにヤノフーズに直接取材、あんこの偽装について事実関係を承知していたからである。
弊社の第一報は22日である。食品の偽装については、その内容により早期の公表が必要となる場合がある。特にヤノフーズのあんこ偽装については、取材段階の21日から中国産の原料を加えていることが判明していた。中国産食材についての危険性は、国民の多くが認識していることである。ヤノフーズの中国産小豆が安全かどうかは、これからの調査に委ねるしかないが、少なくとも「中国産(天津)」を混ぜていた事実は早い段階で消費者に伝えるべきである。22日の弊社の取材に対し、ヤノフーズ側は社長不在のため、社長の身内が対応したが、この時点で偽装について事実上認め、「内容は会見で」としていた。
この日の夜、ヤノフーズが得意先に送ったお詫びの文書を入手、翌日、文書そのものを報じた。同文書によれば、今月16日にTBSの取材を受けたことが明記してある。
なぜTBSは25日まで、ヤノフーズの偽装についてのニュースを流さなかったのだろう?
弊社・NET-IBニュースの一報後、同問題を新聞各紙、テレビ各局が取り上げるなか、TBSの系列局であるRKB毎日放送(福岡市)は、この問題について報じていない。各メディアから弊社への問い合わせが相次ぐなか、RKBの記者が取材に動いているという情報もなかった。RKB側は口を閉ざすだろうが、TBSは自社の看板番組のために、このネタを囲い込んでいた可能性が強い。
TBSは、食品偽装という大きなニュースを、「報道特集」オンエアまでの10日間あまり「眠らせた」ことになる。看板番組の視聴率欲しさとの見方もできよう。こうした姿勢は、決して消費者の利益にはならない。食品偽装の実体や手口の詳細を消費者に知らせることは、報道に課せられた使命である。しかし、事件によっては、まず外形上の事実を報じ、食の安心・安全への警鐘を鳴らすことを優先すべきだろう。今回のヤノフーズのあんこ偽装は、まさにそのケースではないか。看板番組の視聴率よりも優先すべきものがあるだろう。