リゾート権被害者の悲痛な声 新聞報道から見えなかったもの
8月5日に民事再生法の適用を申請し、9月16日に再生手続の開始決定を受けた(株)丸美。福岡地区でトップクラスの知名度を誇っていたデベロッパーの破綻は、福岡地区だけでなく九州全域に大きな影響を生んだ。しかし、影響を受けたのは何も業界だけではない。個人債権者は「被害者」として、ぶつけようのない怒りを持ったまま苦悩の日々を送っている。数々の取材で常に聞かれた、債権者の悲痛な声。丸美の破綻が社会的にいかに深刻な問題を生んでいるのか。第二、第三の丸美を作らないためにも、ぜひ理解していただきたい。
被害者の想い
「親子でリゾート権を購入しました。債権は合計で1,400万円になります。子供の結婚資金として貯めていましたが、もう式は挙げられなくなりました」と語るのは、福岡市東区の男性である。「できることなら取り返したいが、歳で動きまわることもできないので、どうしようもないです。先日も債権額の確定ということで裁判所に書類を提出してきました。やはり悔しいですね、信じていたのに…」。
リゾート権債権者に話をうかがうと、「信用していたのに裏切られた」という話をよく聞く。ある債権者は、丸美のマンション管理の対応の良さで信用し、リゾート権を購入したという。マンションの住民にとって、1口200万円の信用に足るほど対応のクオリティーが高かった分、「裏切られた」という落胆は反動的に大きなものとなっているはずである。
福岡市南区に住むご夫婦は、次のように話してくれた。「リゾート権の購入は、マンションの郵便受けにチラシが入っていたのがきっかけです。7月末に入り用があったので、丸美に解約に行きました。そのとき対応した方は解約を了承し、『正式な書類は後日郵送する』と話しましたが、それに関する証明書も何もくれないので『せめてメモだけでも』とお願いし、名刺の裏に解約の旨を書いてもらいました。『いつお金が返ってくるのか』と聞くと、『2~3カ月後になります』と言われ、正直そのときに、おかしいなと感じました。いくらなんでも2~3カ月もかかるのは遅すぎると思ったからです。その直後の8月頭に倒産という連絡を聞き、『まさか』と思いました」。
そのご夫婦はさらに付け加える。「なぜ一度は解約を了承しながら、叩き落とすような真似をするのでしょうか。せめて解約に行ったときに、倒産のことや解約できないことを伝えてほしかったです。だからといって、この悔しさが消えるわけではありませんが、せめてそのぐらいの対応をするのが当然ではないでしょうか」。丸美の体質に、このご夫婦はどこにもぶつけようのない怒りを感じていた。
取材最後に、ご夫婦から「正直、お金は返ってくるんでしょうか」と尋ねられた。丸美は長谷工コーポレーションのグループ会社にマンション管理・賃貸管理事業を譲渡し、その譲渡益を配当の一部に充てる方針を立ててはいる。しかし譲渡金額は公表されていないためいくらの配当が見込めるのかは分からない。それどころか、長谷工側は「事業譲渡を前提に事業承継の交渉権を取得し、交渉を開始」したとして、あくまで協議段階であることを公表したにとどまっている。ご夫婦のすがるような思いと悔しさを目の当たりにすると悲観的なことは言えず、かといって楽観的な返事もできず、取材班は答えに窮してしまった。被害者の想いは想像もつかないほど切実なものである。(特別取材班)
つづく
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