「売る、売らない」と話が一転二転した志摩コンクリート工業㈱（以下、志摩コン）買収に決着がついた。生コン製造業者の㈱グローバルスタンダード（以下、グローバル社）が今年8月初頭に買収し手中に収めた。グローバル社は、長崎県諫早市に拠点を置く海砂採掘・販売業者の㈱有明商事の子会社である。今年に入って様々なドラマが展開された。目まぐるしい水面下での攻防を含め、そのドラマにまつわるエピソードなど8回に渡り紹介したい。

　さかのぼること約10年前から志摩コンの身売り話は出ており、そのたびに志摩コン側は否定していた。なぜなら、同社の拠点である福岡県糸島郡志摩町を含めた福岡県西部地区は、九州大学伊都キャンパス移転工事が2019年の完全移転まで続く（同学病院地区・筑紫地区・大橋地区・別府地区の移転は無い）からだ。その移転工事と並行して土地区画整備が急ピッチで進行しており、それらの需要があるのになぜ身売りするのか？当時を知る生コン関係者は「そもそも九大移転工事の受注を目的に設立されたのが志摩コンだ。九大移転によりその周辺の企業の研究所や道路整備など多くのプロジェクトが予定されている。よって生コンの多大な需要が見込まれる。だから福岡西地区は生コン含め関連業界において、大金脈となるおいしい地区である。都市高速と西九州道の連結工事もあったからね。14、15年前志摩コン同様、九大需要を狙って生コン業界が相次いで進出しアウトサイダーがひしめいていた。ゼネコンからの強引なダンピング要請で生コン単価が下落し、1㎥当たり5,000円台の時もあった。現在、組合は10,500～11,000円、アウトサイダーで9,500円前後の単価を考えると、採算を度外視した無茶な商売だった。その値崩れで、組合、アウトサイダーとも苦しい経営を強いれられ行き詰まりかけていた。客数が増えても利益が一向に上がらないのが当時の業界であった」と回想する。　【福岡＝河原清明】

つづく

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