事態は消費者事件の様相
丸美の債権者に関するこれまでの報道では、その管理物件に住む住人やオーナーの話ばかりが取り上げられがちであった。たしかに、管理会社としての丸美は非常にウケが良く、それが信頼となって社債やリゾート会員権の購入につながった側面は大きい。しかし、被害者は福岡県下のみならず、丸美の知名度が低い熊本や鹿児島、大分、果ては全国各地にまで広がっている。これはどういうことであろうか。
実は、丸美のリゾート会員権はポイント制を敷いており、会員が友人を紹介するとポイントが貯まる仕組みになっていた。たとえば、紹介した知人が1人入会すると32万ポイントが付与され、そのポイントはロマネスクリゾートの利用権32万円分になる、といった具合だ。しかも、一定期間を過ぎるとポイントは換金できるようになる。すなわち、運用利回りが段階的に上昇するのだ。
加えて、年に幾度かのキャンペーン期間中は付与されるポイントが大幅に増加するため、これが引き金となって加速度的に紹介会員を増やしていった。計算上では、当初説明された5%や6%どころではなく、さらに高い利回りに跳ね上がる構造になっているように見えたのだ。この高利回りの仕組みが消費者心理を刺激しないはずは無い。
さらに、「話がうますぎる」と疑う人間に対しては、同社の06年3月期の決算書が提示された。グリーンシート市場に上場されていた時期の、監査法人お墨付きの決算書が消費者の心の壁を打ち砕く。会員が会員を呼び、勢いをつけて会員数が増えていった。
いつしかその熱は福岡から他県に飛び火し、とくにリゾートホテルが点在する鹿児島、熊本、大分で多くの被害者を生むことになってしまった。
冷静に考えれば、このようなシステムのもとで永続的に経営を続けるのが不可能であることは明白だろう。付与ポイントがリゾート利用権になるとはいえ、ホテルの運営にも多額の現金が必要である。ましてや乱発されたキャンペーンによって生み出された膨大なポイントは、いつしか現金の償還となって丸美の経営を襲うことになるからである。事実、丸美を潰した最大の原因はリゾート会員権(預託金)の解約取り付け騒ぎであった。
たしかに、丸美にはリゾート部門だけでなく優秀な管理部門があり、そこから毎期多額の収益を見込めたのかもしれない。しかし、それでは補いきれないことは、92億円にも膨れ上がった長期預かり金(リゾート会員預託金、弊誌1361号および1362号の破綻時非常貸借対照表)の勘定科目を見れば一目瞭然だ。
常に会員数を増加させなければ経営が立ち行かなくなり、しかも会員を増加させればさせるほど、将来の経営が困難になってくるビジネスモデル。このようなシステムを、リゾート運営ノウハウを持たなかったはずの丸美・金丸氏に入れ知恵したのはどこの誰なのだろうか。それともノウハウを持たなかったからこそ、このようなデタラメなシステムに至ったのであろうか。
金丸氏はいち早く不動産流動化のビジネスモデルを取り入れており、計数面に秀でた経営者であったことから、後者であるとは考えにくい。個人的には、このシステムを認識していたことその一点だけでも、いつか会員を喰い物にすることになるということを金丸氏は薄々感じ取っていたのではないかと思う。
いずれにしろ、事は単なるリゾート会員権問題に留まらず、大掛かりな消費者事件の臭いすら漂う様相を呈している。(特別取材班)
つづく
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