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貧困と地雷被害の悲劇 とり残される村の姿(中) | CMC特別レポート
特別取材
2008年11月 3日 08:00

日常的に起こる地雷事故

 ボル・ビセット君は、06年2月の第10次スタディツアーの際、エマージェンシーホスピタルに右足を奪われた状態で入院していた。ビセットは兄やいとこと川遊びのあと、鬼ごっこをしていて地雷を踏んでしまった。その場所は畑で、日頃から多くの人が耕して農作業をしてきたところで、地雷があるとは誰も思っていなかった。
 事実、その日も同じ場所を逃げた兄たちを追いかけて、最後に通ったビセットだけが被害に遭ったのだ。このように、日常的に使用している場所でも地雷事故は起こるのだ。事故が起きたのは、06年1月11日、まだほんの6才だった。

 井上がソンポールーンの自宅を訪問したのは、06年5月29日。とても小さなビセットが杖をつきながら一歩ずつ歩いてくるいたいけな姿を見て、井上は衝撃を受けた。事故に遭ってまだ数カ月しか経っていないのだ。7才になったばかりで、これから成長するにつれ、骨が肉を突き破る痛みや、骨を切断しなければならない試練が待ち受けている。小学校に入る年齢で、両親も本人も望んでいるのだが、近くに学校が無く行くことができない。ビセットは7人兄弟の末っ子で、父親は農業で暮らしを立てており、この時期は豆の収穫をしていたという。この一帯の道路環境の悪さは最悪で、乾期はともかく雨期には義足や松葉杖で歩くことは至難の業だ。ビセットの向かいに住む男性が義足で歩く姿を見るのが辛かった。

つづく


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