CRC企業再建・承継コンサルタント協同組合
代表理事 真部 敏巳 氏
経営が困難な企業の再建、というと、かつては国や県など自治体主導のイメージが強かったが、最近では、民間のコンサルタントやアドバイザー主導の自主再建や企業承継の事例が増えている。昨今の官製不況や恐慌的金融不安の影響で、経営困難に陥る中小企業があとを絶たない今、民間機関主導による企業再建のメリットや、従来との取り組みの違いはどこにあるのか。CRC企業再建・承継コンサルタント協同組合の真部敏巳代表理事にお話を伺った。
[COMPANY INFORMATION]
本 部:東京都千代田区神田須田町1-12-3
設 立:2001年11月
URL:www.cgc.gr.jp
自主再建の現状
―民間機関主導の再建事例が増えてきているようです。
真部 そうですね。法的整理の場合は、申立代理人弁護士や裁判所から選任された管財人弁護士が対応していきますが、弊社の場合は基本的に法的整理を伴わない、あくまで経営改善型の自主再建を目指す企業のお手伝いというスタンスです。あらゆる分野のエキスパートを組織化して、総合的に企業再建や企業承継の支援活動やコンサルティングをさせていただいています。
今はまだ、自主再建の支援機能が官主導から民主導へと徐々に移行している段階だと思います。民間主導の企業再建の現実は、実績が増えてきたとはいえまだアドバルーン的で、全国的にみても進んでいるところとそうでないところの格差がある。それは取り組み方の差とも言えるし、悪い言い方をすれば、支援を担当する人の「あたり・はずれ」の差、というところが現状です。
―主にどのような点で格差がみられるのでしょう。
真部 金融機関の同意を伴う債権放棄事案の場合、私的整理のガイドラインに沿って対処するという厳格なルールがあります。また、公的機関の支援を受ける場合には、全国各地にある中小企業再生支援協議会を活用する必要がありますが、それぞれの担当者の進め方にバラつきがあるんです。そうなると必然的に再建のための支援方法にも差が出ます。さらには、私たちCRCのような、企業再建を専門とする民間機関が充実してきてはいるものの、まだ協議会との連携がうまくできていないケースがあるのも格差の一因かもしれません。
―その格差を埋めることはできないのでしょうか。
真部 最近では、各地の協議会で考え方を統一し、地域間の格差を小さくしていこうとする動きは次第に出てきています。ケース・バイ・ケースであるべき再建の推進が画一的になるのではという懸念も一部であることは事実ですが、まずは取り組む目線や水準をある程度統一することは大切だと思います。
経営者の意志あればこそ
―実際に手がけられた事案で、印象に残っておられるものはありますか。
真部 この数年で手がけた事案では、過剰な設備投資と営業努力の不足が原因で経営が立ち行かなくなり、そのエリアでは過去最大の債権者数を抱えた事案がありました。一部債権カットはありましたが、半年かけて延べ100回以上債権者を回って丁寧な話し合いを重ねた結果、一般債権者には1円も迷惑をかけることなく整理でき、最終的にはスポンサーも見つかって無事経営譲渡に至りました。
また、初動の段階で関係銀行のOBが乗り込んで再建に着手したものの、銀行主導の中途半端な一次処理のためにかえって状況の悪化を招いてしまっていた例もあります。一部に債権者の強い圧力もあったようですが、資料などから債権処理の経緯を読み取る限りは、依頼者である経営者の意志が全く反映されておらず、最終的にその担当者からは「破産の道しかない」と言われ、経営陣が経営陣でなくなってしまっていました。破産させないためには債権者区分をランクアップさせて少しでも企業価値を高めておく必要があるのですが、お引き受けしたものの重症すぎてどうしようもない状態でした。
―再建が頓挫してしまったということですか。
真部 実は、そこまで悪化した状況を経営者の息子さんが途中から引き継いだのですが、この方が大変清い、潔い方で「何とか単純破産だけは避けて、自分たちについてきてくれた社員たちを守りたい」という思いを持っていらっしゃいました。その思いがやがて強いリーダーシップになり、それを感じ取った社員の方々の結束も次第に固くなっていきました。資産処理も査定以上に進みましたし、ちょうどタイミングよくスポンサーが手を挙げてくれたことも奏功して、今ではほぼ計画通りに再建が進んでいます。
―一方的な再建ではうまくいかないということなのでしょうね。
真部 それは間違いなくそうですね。経営改善型自主再建の場合、我々コンサルタントと、経営者、債権者が三位一体で推進しなければなかなか成功しません。そのためにはまず、経営者の意志をしっかりさせることが肝要だと思います。先ほどの例で申し上げれば、もしも処理の取りかかりを社長の息子さんの意志の元にやっていれば、もう少し早い段階で見通しがついたのではないかとも思います。
またその際に、状況の悪いときにこそ一緒に汗を流してくれる社員も、企業にとってかけがえのない貴重な財産なのだな、と痛感しました。企業再建の原動力は、思いのある社長さんを中心として一致団結できる人材が再建の実務的な推進力になりますし、私たちの知識や経験もより一層生きてくるのではないかという気がしています。
不景気の「実感」
―今現在の国内の経済状況をどのようにご覧になられますか。
真部 例えば不動産やゼネコンの「突然死」的な大型連鎖倒産が頻発しているのはすごく大きいと思います。ゼファーもアーバンコーポレイションも、実は黒字倒産ですよね。でも何かあると、金融機関の融資が止まり、価格を下げればどうにか売れていたファンド物件にも買い手がつかなくなり、結局破綻…値崩れ云々ではなく「買い手不在」で、しかも一部のおいしいところだけを外資が買っていく、それが今の現実だと思います。
―それは、コンサルティングの現場でも言えることなのでしょうか。
真部 弊社では、前年に比べて企業再建の部門で売上が伸びています。もちろん、CRCを使っていただいて自主的に再建・再生しようという認識が広まってきていることも確かにあるのですが、一方で世の中が不景気である、という端的な現われだとも思っています。不動産コンサルタント部門との売上比が7:3ぐらい。不動産部門は、物件が動かなければ相談件数の増加には繋がりませんから当然かもしれませんが、それにしても3、4年前に比べて構成比が逆転しているのを見れば、やはり不景気なのだと実感せざるをえませんね。
真部 敏巳【まなべ・としみ】氏
(株)リクルート住宅情報・(株)リクルートコスモス流通営業部を経て、公認会計士事務所の不動産関連会社社長に就任。
1992年、(株)アセット・パートナーズを設立後、専門家集団の(株)サテライト・コンサルティング・パートナーズのコアパートナー。
2001年、経済産業省認可団体である企業再建・承継コンサルタント共同組合を設立し、その代表理事に就任。
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