救済への道
このように、丸美の破綻後2カ月が経過してもなおさまざまな動きが出てきているが、今後予想される展開について言及したい。
まず被害者の会としては、金丸、宮崎両氏の責任を徹底的に追及していくとしており、今後は熊本以外の各県にも活動を広げていく方針。さすがは「天下一家の会」(内村健一によるネズミ講事件)など大規模消費者事件を戦った地の人間らしく、その決意には並々ならぬものがある。ただし、被害者には高齢者も多いことから熊本までの移動が困難で、かつ同会自身も時間的問題で各地に出向くことができないことから、熊本以外での活動が難しいのが現実。そのため同会は各地の被害者に活動に賛同してもらい、それぞれの地域で立ち上がることを現在呼びかけている。
最大の被害地である福岡での動きが鈍い点が悩みの種だ。福岡では管理組合経由で被害を受けた人が多いため、被害を自分のものとして捉える実感に欠けているのが背景にあるのだろう。
しかし、各県での告訴が広まれば、警察・検察の動きも県をまたいだ広域捜査になりやすく、そうなればより多くの情報を早期に得ることができる。その過程で、囁かれている経営陣の財産隠しの有無も明らかとなるであろうし、金丸氏個人に対する民事での責任追及もしやすくなる。福岡の各債権者が被害を自分のものとして捉え、勇気ある一歩を踏み出すことが期待される。
また、限定的な話にはなるが、被害を一部回復する手立ても無くはないようだ。丸美は最終盤で資金集めのためにさまざまな各種リゾート商品を乱売していたが、そのなかに「賢旅」(かしこたび)という商品がある。このうち「賢旅50」は、各25万円の購入代金と保証金を預ければ年に10万円分のクーポンが5年間もらえ、5年後には25万円の保証金が戻ってくるというプラン。これが破綻した丸美との契約ではなく、現在も生き残っている(株)丸美リゾートとの契約になっていたのだ。
丸美リゾート側は一部の解約希望者に対して、「保証金はすべて本社(丸美)に送ってしまっていて、返金できません」と答えているようだが、これが何ら正当な理由に当たらないことは、日頃から経営に携わっておられる弊誌読者ならすぐにお分かりいただけるであろう。少額訴訟制度を用いるなどして、早期の被害回復を図る余地があり、被害者側と丸美リゾート側双方の動きが注目される。
さらに法的手続きに関連して、9名にも及ぶ丸美弁護団の存在もにわかに注目され始めている。筆頭の稲美友之弁護士(平河総合法律事務所)はロッキード事件を手掛けた政界にも通じる大物弁護士で、それなりに高額な顧問料が必要とされる。
民事再生中の弁護士費用は、顧問料のほかにもかなりの費用が必要であり、裁判に対応した場合は裁判費用も別途かかることになる。そのような資金の余裕が民事再生途上の丸美にあるのか、そもそもそれだけの弁護団の必要性があるのか、との疑問が持たれているのだ。「会社顧問の9名の弁護士が、会社の弁護士か、金丸氏個人の弁護士かはっきり分からない」「被害者の会を黙らせるための弁護団だ」と訝しがる声も聞かれる。
ある被害者に対しては、ロマネスクリゾートの電話番号から大物弁護士の存在を強調するかのようなFAXが届けられたとの話も聞かれ、関係者の個人的な確執も含めてまだまだ混乱の様相を呈している。
今なお大きすぎる爪痕を残す丸美の破綻。弊社取材班は今後もこの事件の闇を追い、随時皆様に報告していきたい。(特別取材班)
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