福岡県西部地区において九州大学の伊都キャンパス移転需要をにらみ、生コン製造を目的としてマツコングループが1996年4月に志摩コンクリート工業(株)を設立した。
当初はアウトサイダーとして「生コンのコンビニエンスストア」を全面に押し出した。競合がひしめくこの時期、福岡地区生コンクリート協同組合は業界をまとめることができず、アウトサイダーの新興勢力台頭を許して生コンの乱売合戦となっていたことは既に述べた。
この事態を打開すべく、生コン組合は新興勢力を組合内に取り込んだ。志摩コンも組合に参画、大同団結により価格が安定した。
マツコンオーナー長男の岡圭一郎氏が2002年代表に就任。組合加入後、志摩コンは毎期4億円台の売上高を維持し、08年3月期の売上高は4億9,716万円で、最終利益は364万円を計上した。売上高は0 7年同期より約4,190万円増加するも、最終利益は約1,060万円減少した。利益減少の原因は昨今の原材料費高騰などが挙げられる。
財務面は、08年3月期で自己資本比率8.38%と脆弱な財務基盤である。流動資産においては、短期貸付金2億3,209万円が「マツコングループへの貸付金だ!」(関係者談)ということで資金の使途が固定化されていると考えられる。したがって、実質は債務超過の状況で、借入依存度が30.65%と、07年同期と比較して11%上昇していることも見逃せない。(別表参照)
「親であるマツコングループの金ズル。親は公共工事依存で自浄能力はない。07年5月に破綻した同じ地区の松田建設(株)に焦げ付いた。どうも松田建設との間で、不明瞭な手形操作があったようだ。この焦げ付きから段々と資金繰りが逼迫してきた。今年に入り志摩コンから吸い上げるのも限界に来ていた」(関係者)。否定していた志摩コンの売却話が、再び浮上してきたのも今年に入ってからである。(つづく)
(別表)
▲志摩コンクリート(株)の貸借対照表(左)と損益計算書(右) (クリックすると拡大されます)
※記事へのご意見はこちら