防衛省が揺れ続けている。5日、防衛装備品の調達をめぐる汚職事件で、収賄・議院証言法違反で起訴されていた前事務次官・守屋武昌被告(64)に、懲役2年6ヶ月、追徴金1,250万円の実刑判決。
3日には、アパグループの懸賞論文に応募した自らの論文の中で、「我が国が侵略国家だったのはぬれぎぬ」などと主張し、政府見解に真っ向から反論。日本を北朝鮮になぞらえた田母神俊雄前航空幕僚長の「定年退職」を発表していた。
背広組、制服組のそれぞれのトップが相次いで社会問題を起こしたことで、防衛省という組織の健全性に疑義が生じている。
背広組(内局)も、制服組(武官)も法律上は同じ「自衛隊の隊員」である(隊務を遂行するのが『自衛官』)。しかし、シビリアンコントロール(文民統制)が厳格に守られない限り、日本は国際国家として認められることはない。軍部の暴走を止めることができなかった戦前、戦中の反省と、戦争の惨禍を知る者の自覚の上に立脚するわが国には、より厳格なシビリアンコントロールが求められて然るべきだろう。
当然、統制する側である背広組の腐敗は致命傷である。内局トップが、家族ぐるみでゴルフ接待を受けたり、金をもらっていたとすれば、そんな人間から指図されて唯々諾々と従う「自衛隊員」はいまい。
案の定、航空自衛隊の制服組トップである航空幕僚長が、立場もわきまえず自己の歴史認識を振りかざし、国際社会からひんしゅくを買った。国益を損ないかねない暴走行為である。こうした人物が「国を守る自衛隊」の幹部だというからあきれ果てる。
背広組、制服組、それぞれのトップが「公」を忘れ「私」に走ったという点では、同じ構図である。いずれにしろ防衛省が信頼を取り戻すまで、長い時間を要することは間違いあるまい。防衛省にとっても、国民にとっても憂鬱な話である。
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