麻生首相が先週発表した事業総額27兆円に及ぶ追加経済対策に対し、早くも失望感が広がっている。市場は株価の下落をもって「評価」し、経済界からは「GDPの押し上げは限定的」「何もしないよりはいいが、対策は不十分」との声が聞かれる。国民の間からも「3年後の消費税増税」で将来への不安の声が増すばかりだ。
一方、解散総選挙については「政局より政策」として先送りを表明。民主党はもとより、与党からも不満が噴出し、政府・与党間のギクシャクが表面化している。実績づくりをねらった麻生首相の思惑通りにはいきそうにもない。
麻生首相の誤算
麻生首相の会見は、本人の希望や意図とは逆の結果を生んだ。ひとつは経済対策のずさんさである。
麻生首相はグリーンスパン前FRB(アメリカ連邦準備制度理事会)議長の「50年以上か100年に1度の事態」という言葉を引き合いに「100年に1度の金融災害」という「暴風雨」から国民を守るための大胆な対策、と大見得を切った。にもかかわらず、「2兆円の給付金」や「高速道路料金休日1000円」などの目玉政策は、とても景気浮揚には効果がない、と指摘されている。また住宅減税についても詳しくみればその恩恵にあずかる人は少数である。とても「100年に1度の事態」を乗り切るには程遠い内容だ。
かつて「真空宰相」と言われた小渕首相は、橋本内閣を襲った金融危機(北海道拓殖銀行の破綻や山一證券の廃業など)のあとの1998年、「経済再生内閣」として17兆円を超す緊急経済対策を実施した。「金融システムの再生、需要の喚起、雇用と起業の拡大」が主な柱で、「需要喚起」のために社会資本整備の拡充、大型減税による消費の刺激を行なった。こうした小渕内閣の政策がその後の財政悪化を招いたことは周知のことであるが、これと比較しても麻生内閣の追加経済政策にはメリハリがなく、「ばらまき」との印象を与える。「暴風雨」を乗り切る活力と希望を生み出していないことは確かである。
つづく
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