政府が打ち出した新総合経済対策の目玉のひとつ、「高速道路料金1,000円」について疑問を感じる。そもそも、トラックなど流通を担う車には適用されず、自家用の一般車両に限って土日祝日だけを1,000円で乗り放題にすることが、景気対策になるとは思えない。原油価格が下げ基調であるとはいえ、運送業をはじめ、疲弊しきった流通関連企業にこそ手厚い対策が必要なはずである。
土日祝日にお出かけを促し、内需拡大につなげようとでもいうのだろうが、一時的に多少の通行量が増える程度だろう。年金や医療といった課題を積み残したままでは、将来に希望が見出せず、遊ぶ金があれば貯蓄に回そうというのが普通の考え方ではないだろうか。高速道路が1,000円でも、目的地では金を使うことになる。しかし、その金がもったいないからこそ、消費が伸びなやんでいるのではなかったか。ただ高速の通行車両が増えただけでは、何の効果も上げられない。
加えて、ETC(自動料金収受システム)利用車に限定するとあっては論外である。金持ち総理が考えたことか、バカな役人が考えたことか、いずれにしても特定のものだけが得をするという話である。ETC利用車だけが得をするのはけしからん、という話はいずれ噴き出すに決まっている。
ETC車載機器の売れ行きが伸びそうとのニュースが見られるようになったが、一番喜んでいるのはETC事業の総元締め「財団法人 道路システム高度化推進機構」であろう。さらに言うなら、同機構に天下った国交省の高級官僚やクレジット会社は大喜びしていることだろう。「そんな財団法人なんて聞いたことない」という声が聞こえてきそうだが、同機構の専務理事をはじめ常勤の理事は元国交省の官僚である。理事にはETC事業で儲かる企業の役員らがずらりと並ぶ。こうした事実をたどっていけば、「ETC車だけ1,000円」が本当に国民のための政策とは到底思えなくなるのである。