福岡市立こども病院の人工島移転の是非を問う住民投票の条例案について、吉田宏市長は18日に開会する市議会臨時会で、条例制定は不必要との考えを示すことが明らかになった。
市を二分する政策決定において、市民の意見を十分に聞く。そうした市政運営の基本を無視し、こども病院の人工島移転が強行される。市民が条例制定の権利を行使しても、結局、行政のご都合でしか物事は決定しないのか。失望感が広がっている。
市議会は11日、議会運営委員会で臨時会の日程を、今月18日と19日の2日間とすることを申し合わせた。患者家族ら市民から直接請求のあった住民投票条例案を審議する。市長は条例案に、「条例制定の必要はない」などとする意見書を条例案に付ける。
住民投票条例案の制定に向けた動きは、3カ月前の8月に始まった。当時は市が人工島移転を強行する姿勢を強めており、7月に3回開かれたこども病院移転に関する説明会にも市長は1度しか出席せず、反対の声にも耳を貸さなかった。
市のこうした姿勢に憤った患者の家族らは、「せめて賛成か反対かだけでも市民の声を聞いてほしい」と住民投票条例案の直接請求を始めた。そうして集められた3万人超の署名だったが、吉田市長は住民投票は必要ないと民意を切り捨てる考えだ。
吉田市長は、市長選時のマニフェストにこう書いていた。
「現市政に対する不満として『われわれの意見を聞こうとしない』というものが多かった。そこで市民の声を直接聞くミニ集会を定期的に開催する。(1)身の回りの問題(2)その時々に話題となっている問題―などについて人々の意見を直接聞き、自分自身が問題について考え、それを市政に反映させる」
こども病院の人工島移転は、賛否を二分する福岡市最大の懸案問題となっている。住民投票は直接市民の声を聞くチャンスである。が、市長はまたも公約を破棄するのか。
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