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エイルマンションはなぜ売れる?その原動力を探る|作州商事㈱
特別取材
2008年11月15日 17:18

代表の樺島敏幸氏とオーナーの城戸辰徳氏が運営する作州商事㈱。マンション業界全体が販売に苦戦しているなか、粕屋の物件(143戸)や熊本市の2物件を完売し、際立った販売実績を残している。また、宇美Ⅱセントレイズ(56戸、2009年1月竣工、11月入居予定)を着工したばかりであるが、すでに22戸販売した。同社のエイルマンションがなぜ売れているのか、周辺の関係者に聞いてみた。

代 表:樺島 敏幸
所在地:福岡市博多区大博町2番7号
設 立:1985年3月
資本金:1億円
業 種:不動産開発事業
売上高:(08/3)約116億円
   :(08/3)約140億円
※売上高は決算期変更により10カ月の変則決算

好感触の来場者

 同社オーナーの城戸氏は以前から超ワンマンで知られ、今でも営業に対して日々電話で檄を飛ばしているという。しかし、いくら営業マンに対して檄を飛ばそうが、マンションを購入するのは客であり、営業マンにとっては初めて会う人たちだ。客にとって、マンション購入は一生に一度の買い物で、結論を出すのには慎重。そのうえ、昨今ではマンション業界の販売競争が激しく、近隣では営業の兵がしのぎを削る状態である。そうしたなか、順調に完売し続ける同社のエイルマンションの魅力とは―。
 同マンションを最近購入した居住者に購入動機を尋ねてみた。「購入するとき、他のマンションも見てまわったが、エイルマンションの間取りが一番気に入った。使い勝手も良さそうだったので購入した」とのこと。満足しているか問うたところ「満足している」という回答だった。また、モデルルーム来場者に質問したところ、「近隣に販売されているマンションが無く、地元に住みたかったから来てみた。モデルや完成図を見た限り良いなと思っている」という。
 同業者の営業マンは、「他社のマンションより間取りが広く取られており、ベランダも広い。開発地は形状も考慮して購入しているようで、資金を持っているゆとりで土地を購入しているのでしょう」と語る。別の同業者は、「場所が良い。近隣に別の販売物件があっても、作州さんの方がより良い場所に開発しているから売れるのでしょう」とのコメントだった。
 異業種の人が話すには、「作州さんのマンションは主婦に人気があるようです。間取りが良いと聞いています。評判が良いですね」とのこと。他にもいろいろな人にエイルマンションが売れる秘訣を尋ねたが、上述の点に集約された。
 以上のことから、エイルマンションは(1)主婦に人気の間取りを採用している、(2)ベランダが広い、(3)田舎でも都心でも他社より売れるような場所に開発していることなどが好調な販売の要因となっているようだ。同社は建物の間取りなどの設計開発力と、売れる土地を取得し開発するマーケティング力を兼ね備えた会社ということになる。
 しかし、それだけで売れるわけではない。城戸オーナーが檄を飛ばし続けながら、マメに営業する営業マンの努力があってこそ完売しているのである。以前、同社関係者に尋ねたところ、開発用物件は4~5年先まで確保していると述べていた。

値引きも決断のうち

 樺島氏が社長になったとき、売上高225億円と過去最高を記録していた。その後は情勢を見ながら調整した開発を行ない、実質的に売上高は落ちているものの、利益はしっかり確保されている。同社は、樺島体制下で過剰気味の所有不動産をかなり処分している。自社で抱えられる財務基盤を有していたからこそ、他社の開発動向も見極めながら売れる場所の不動産を開発することができた。
 また、これまで190棟以上を市場に供給してきた実績から、主婦層に好評な間取りを実現させ、新築物件に生かしている。「ああいう造りを真似したいが、コスト高になり、自分のところでは作れないですね」と述べる同業者もいるほど。コスト高は別にして、他社との差別化に成功していると言えよう。
 マンション開発業者は、販売して初めて利益が生じる。大量の売れ残りから大幅な値引き販売をしていては、その間のコストもかかり利益がふっ飛んでしまう。通常、販売戸数の2割が最後まで残り、その分の販売に開発業者はいつも苦慮するという。同社が苦戦を強いられていた新潟県長岡市の物件も残り3戸となっており、モニター制を取り入れて実質値引き販売をしている。鹿児島県鹿屋市の物件でも同様である。残戸数が少なくなり長期化すれば、経営者としてそうした決断も必要なときがある。

財務改善が進む

 城戸オーナーは原価に対してもうるさく、追加工事の支払いを認めないケースもあると言われている。一方ではゼネコン泣かせに見えるが、もう一方では、利益を出し財務基盤を良くし先行投資の土地も仕込める会社にすることができたとも言える。
 利益を出すのは購入する客だけではなく、建築代金や追加工事を値切っても生じる。ただ同社に関しては、建築費用の値切りを不服としたゼネコン側からの裁判などは今のところ無い。
 また昨今、建築資材が高騰しており、建築コストを抑えるべく関係会社の八州建設?に建築させる物件が多くなっている。頭でっかち(本社組織など)なゼネコンではなく、関係会社に建設させることで、より安く建設することができる。こうした建築体制は、大手ゼネコンの人材を登用して実現させており、資材高騰による販売価格の上昇を抑えるとともにグループとして最終利益の増加を目指す動きとなっている。
 同社の業績について見てみよう。売上高は、05年5月期は約168億円、06年同期は約225億円、07年同期は約238億円を計上。08年期は決算期を2カ月短くして3月決算とした結果、約116億円(グループ総売上高約140億円)となっている。前3月期は前々期よりもかなり売上高を減少させているようだ。
 07年度は不動産売却の売上高が計上されており、同社の中核事業である分譲マンション開発での売上高は07年期よりすでに減少傾向にあった。しかし、売上高至上主義を取らなかったからこそ、現在も良い場所で開発することができ、販売も順調なのだろう。
 同社は樺島氏が社長に就任してから、城戸社長時代にはできなかった不採算事業からの撤退なども実行しており、過剰な所有不動産も処分した。借入金を06年5月期121億円から07年5月期69億円と約半分まで減少させたことからも、財務改善が進んでいるのが分かる。
 現在では再度、樺島体制から城戸オーナーが全権を握るようになったが、厳しい時代だからこそ檄が必要なときもあり、それが有効であったことを完売という事実が示しているとも言えよう。城戸オーナーの健康状態が気になるが、客に喜ばれる商品(マンション)を作り続けるかぎり、また特別なことが無い限り、同社の健康状態も維持され続けるものと思われる。


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