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コダマの核心

ディックスクロキ倒産の衝撃、黒木透氏の果たした役割とその限界(中)
コダマの核心
2008年11月18日 08:00

マリアクラブ跡地の処理が飛躍の要でありまた破綻の要因を内蔵
300所帯のマンションを出現させる

 中央区舞鶴(天神3丁目と境にしている)にある親不孝通りには、若者たちの悲喜こもごものドラマが展開されてきた。バブル絶頂期、この親不孝通りの一角に、冬野観光が「マリアクラブ」という巨大ディスコを築いた。若者たちがあまりにも群がるので一時は親不孝通りから「マリアクラブ」までの通りが「マリアストリート」と呼称されるようになったほどだ。若者たちは踊りに興じて酒を楽しみ、恋を語り、青春を謳歌した。この頃の若者は幸せだったといえる。今の若者たちには楽しむところや設備が少ない。可哀そうな気がする。

 しかし、若者の宴の夢は破れた。冬野観光も潰れた。残ったのはマリアクラブの図体の大きい建物だけである。まさに幽霊屋敷と化してしまったのだ。「マリアストリートを歩くと怖い。素性の知れない兄ちゃんたちがウロウロしている」という声も聞かれるようになったのである。ある日のことだ。黒木氏から「マリアクラブ跡地を取得できそうだ」と聞かされた。「それは良かったですね。140万都市にふさわしい若者向けの拠点になる施設を検討してください」とこちらの気持ちを伝えると「いや、300所帯の賃貸マンションを建設する計画だ」と黒木氏。「あんなところにマンションですか」と再確認を求めたが、
黒木氏は「そうです。マンションを建設します。若い者が居住できれば若者向きの街になる」と断言した。「都市中心部で居住には適していない」と偏見を持たれていたエアーポケットに、賃貸マンションを建てる黒木氏の先行的な決断に同業が後追いを始める。中洲5丁目や中洲中島町も同様にアパートラッシュとなった。都心部での人口減を食い止め、逆に人口増に寄与することになったのだ。

国家投資家も注目する
 
 マリアクラブ跡地を利用した大型物件の売り出しは、ディックスクロキのビジネスの質的転換をもたらした。従来のお客は個人家主・中小企業の経営者であった。マリアクラブ跡地の300所帯規模の案件を購入するのは無理である。当然、取引先は大企業・不動産投資専門家になってくる。マリアクラブ跡地の処理のあとにも中央区港に200所帯の規模の用地を確保した。いよいよ黒木氏の脳裏には大型案件の企画が満載されるようになった。だが同氏の構想を耳にしつつも、筆者は「一社で200、300所帯の物件を供給していたら必ず市場の原理からしっぺ返しを受ける」という危機感を抱いていたのだがー。

 上場会社の宿命は「減収は許されず常に増収計画が求められる」ことだ。マリアクラブ跡地規模の大型物件を連発できれば、上場企業としては至極簡単に増収のハードルをクリアできる。そしてまたまた黒木氏には強力なフォローの風が支えになってくれた。不動産融資の形態が多様化するようになったのだ。「金融工学の技術的な進歩のなせる業」と吹聴されてきた不動産ファンドによる資金調達法である。

 黒木氏はこの新たな不動産資金調達術を先頭に立って勉強した。幹部社員にも学ばせた。この追い風に乗って注文が殺到した。昨年8月当時、同氏は「仕入れが追いつかない」と嬉しい悲鳴をあげていたほどだ。営業エリアも九州一円、名古屋、東京、札幌と拡大していった。オファーをくれる先も、一段とスケールアップした。AIGグループの会社が天神新天町入口のオフィスビルを購入してくれたりもした(4月に決済してもらいこの案件は無事で済んだ)。

 加えること国家投資団がディックスクロキ詣でをするようになった。同社のマンションの出来栄え・管理力を高く評価してくれたようだ。シンガポール、オーストラリアの政府系の投資会社との交渉も進んでいた。平成20年3月期売上268億円をあげて一見「我が世の春」を謳歌している感じであったが、クライシス(危機)は隣にすり寄っていたのだ。


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