19日に開かれた福岡市議会臨時会で、直接請求があった住民投票条例案の採決が行なわれ、議会は条例案を賛成少数で否決した。最大会派自民党のほか、公明、みらい福岡、民主、福政市民クラブが反対した。「市長や議会にとって、市民の声を聞くことの何がいけないのか、わからない」。市議会の出した結果に、患者家族らからは怒りと落胆の声が聞かれた。怒りの矛先は、吉田宏市長のリコールへと向かい始めた。
「検証偽装だ」3会派と無所属議員が反対討論
同日の市議会臨時会では、前日に「否決すべき」とした第2委員会の報告に対し、共産、ふくおかネットワーク、社民の3会派と無所属の高山博光議員が条例案に賛成の立場で討論を行なった。
比江島俊和議員(共産)は「市長は人工島を見直すと公約しておきながら、前市長と同じコンサルタント会社に事業計画を業務委託し、現地建て替えの費用は名前も言えないゼネコンの助言で1.5倍に水増し他の候補地を排除した。検証検討とは名ばかりの『検証偽装』だ」と述べ、「裏切り、嘘つきと言われても開き直る市長の態度には、『もうリコールしかない』と市民が怒るのも当然だ。議会が否決したとしても、反対世論が高まり、厳しい審判が下されることを確信している」と市長のリコールに言及した。
池田良子議員(社民)は「直接民主主義は、間接民主主義を補完し、市民参画を活性化する。市長が住民投票をかたくなに拒否するのは市民の権利を否定するものだ」と主張、高山議員は「市長が言う人工島移転を『ゼロから見直した』形跡はどこにもない。186億円の病院建設費は贅沢で節約の跡形もない。財政再建をするといった市長公約にも違反している」と断じた。
条例制定反対側としては、栃木義博議員(民主)が「住民投票条例は妥当性を欠き非現実的。制度に整理されるべき課題がある。直接請求はこれまでの議会の検討を軽視するもので、議会人として容認できるものではない」などと反対理由を述べた。しかしこれには、「民主の名を変えろ」「恥を知れ」と野次が飛んだ。
採決の後、請求者代表の佐野寿子さんは「市民の声を聞いてほしかっただけなのに、なぜ聞いてくれないのか。何を怖がっているのか。市長や議会にとって、市民の声を聞くことの何がいけないのか、わからない」と憤った。
市民団体などが福岡市長リコール検討
市議会で住民投票条例案が否決されたことで、人工島移転に反対している市民団体の代表は「人工島移転を止めるには、もうリコールしか残されていない」と話した。複数の市民団体や政治団体が市長のリコールを検討していることも明らかになった。
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