とにかく払いをケチるのが趣味
城戸氏は、若い時に難病にとりつけかれて再起不能と言われた。ところが、前回触れた「泰道」の教祖と知り合い奇跡の回復をした。この宗教(?)にほれ込んでしまったことは当然の成り行き。凄いお金を上納して序列4位とか5位にランクされる勢いであった。「宗教に凝りすぎて現代医学を蔑にしたので肺ガンの進行を食い止められなかった」などと、この紙面で批判をするつもりは毛頭ない。この機会に言いたいのは、城戸氏が宗教心を深めていったのであれば、どうして人格形成の深みを極められなかったかということだ。
城戸氏は、決済の最終局面で払いをケチるのを趣味のようにしていた。個人レベルでもゴルフ、麻雀の握りでは、決して負けたくない、払いたくない、という異様な執念を見せて嫌がられていたのは有名な話だ。ゴルフで負けていると、最終ホールで「プッシュ、プッシュ」と圧力をかけてくる。これは個人の資質に関するものだから云々するものではないのかしれない。だが、商売人として最後の払いでケチることは商道徳に反する。「泰道という宗教は人間に徳を積ませない。いかがわしい」という見方が流布されるようになる。
作州商事は、設立と同時に好スタートを切った。相当数の商品を仕込んだので自社の営業部隊だけでは消化不良である。そこで販売代理の会社に号令をかけた。今は福岡で基盤を確立したマンション業者も、一時は同社の販売代理を任せられた。結果、最後にはイチャモンをつけられ、払いを値切られてしまう。「何故、裁判をしないのか?」と業者に問いただすが「城戸氏のあの粘着性には負ける、閉口する」と語る。
「値引きしても良いから完売しろ!!」と城戸氏から指示を受けた販売代理の社長は、その言葉通りに完売した。しかし、最終決済の局面で販売値引きをしたのは「君のところの責任だ」と言い切られ、この会社は1,000万円以上の未回収金を発生させてしまった。「もう二度と顔を見たくない」とこの社長は怒っていたが、周りがこの「払いこぎり」を見逃したからこそ、城戸氏はその手法が「世間で通用する」と確信して神様になったのである。
最後ではしっぺ返しを浴びる
城戸氏が脱税で逮捕された。所属している業界団体に脱退を申し入れた。作州商事は緊急の人事体制=樺島社長体制を築いた。そこで樺島社長は信用を回復する一環としてこの団体に再加盟の要請をした。この団体の会長は大人である。「作州商事の復帰の議題」を理事会にかけた。理事会のメンバー達は白けている。「奇異な感じ」を会長は抱いたので次回の議題に持ち越しされた。
次の会議で会長は「作州商事に対する本音を吐いてくれ!!」と理事メンバーに促した。「会長!!私は数千万円の販売代理の対価を踏み倒されています。こんなところを会に復帰させられますか」とようやく本音が語られた。「私のところも同様です」と挙手する別の理事が現れた。会長も初めてことの本質を了解した。再加盟を打診していた樺島社長も、同業者からいかに根深く恨まれていたか、改めて認識したのである。(つづく)
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