こども病院人工島移転の是非を問うための住民投票条例案を否決した福岡市議会。本会議で、条例案に対する反対討論をした民主党市議団の発言内容に批判が集中した。膨らむのは民主党への不信感ばかりである。

　19日、福岡市議会の本会議で問題発言を連発したのは同党の栃木義博市議。条例案への反対討論で、「有権者は」としたうえで「知識が少ない」「ムードや感情に左右される」などと侮辱。「住民投票」についても、事実上これを否定していた。民主党としての考え方なら重大な問題である。（既報）
　
　容認できないのは、前述の発言内容だけではない。こども病院の人工島移転について、市民が住民投票条例の制定を求めざるを得なかったのは、「聞く耳」を持たない市長への不信と、議会の不作為が原因である。これまで、ネット-IBニュースでは、証拠となる文書を入手し、

　・「人工島事業、検証・検討」が「見直し」を偽装したものだったこと。
　・市側が、決まっていないとしていた病院移転地について、総務省へ提出した起債協議のための文書には、早い時期から「人工島」と明記されていたこと。
　・要望の多かった「こども病院現地建て替え」について、「検討」ではなく否定のためのシミュレーションを作成させていたこと。
　・現地建て替え工事費を、約43億円も水増ししていたこと。
　・人工島の移転予定地面積や購入単価が、なし崩し的に拡大されたこと。

等々をスクープしてきた。

　改めて民主党の議員に問いたい。市が人工島事業検証・検討やこども病院移転に関し、業務委託した文書を読み込んだことがあったのか！少なくとも弊社報道があるまで知らなかったのは事実である。それらの文書からは「はじめに人工島ありき」の結論しか出てこないはずだ。自民・公明は、もともと市立病院統合移転が持論。しかし、民主党は大型開発ストップ、人工島事業の見直し、こども病院移転の白紙見直しなどを公約に掲げ、当選した市長の推薦母体である。公約違反との批判を無視する市長と同じレベルであるばかりか、たいした勉強もせぬまま、有権者批判とは何ごとか！

　さらに問う。民主党会派は、反対討論で「敷地面積、担うべき医療機能、移転に伴なう小児医療の配置バランス、交通アクセス、医師等人材の確保、整備費用、経営形態、収支見込、病院事業の財政健全化、市民の意見・医療関係者の意見の受け止め方、病院事業運営審議会答申の受け止め方、アイランドシティ整備事業検証・検討に関すること、新病院事業の受け止め方等、多くの視点から議論を尽くしてきました」と述べたが、どの項目についても患者家族や市民の納得は得られていない。何より、この問題に関して本当のプロである小児科医、産婦人科医の大半が「移転反対」を意思表示している。民主党市議より「知識が豊富」である医療関係者が反対していることをどう考えるのか。福岡市議会は、ろくに関係文書も調べず、問題の本質を避け、形だけの議論に終始した。まともにこども病院問題の追及をしたのは一握りの議員だけだ。そうした意味では、自民も公明も同罪だが、彼らは最初から人工島事業推進なのだから分かりやすい。しかし、大型開発を批判し、白紙だ、見直すだのと言い切り、選挙を戦った市長や民主党議員は、市民をだましたということではないのか！

　民主党は、総選挙に向けて「無駄な公共事業をなくす」と叫ぶ。福岡市の民主党を見る限り、その公約は守られないと断言させてもらいたい。有権者受けすることを叫ぶのは選挙の時だけ。市民の味方の「ふり」は上手だが、いざとなれば態度を変える。国民目線ではなく「組合目線」の地方議員ばかりである。そんな政党が信用できるはずがない。「こども病院人工島移転」には、移転費用に約200億円、人工島への交通アクセス改善のためとする都市高速延伸に300億円から400億円の公金投入が見込まれる。最大600億円もの公費支出は、本当に必要な公共事業なのだろうか。知恵を出せば、もっと別の手法があるはずなのに、民主党市議団はこども病院人工島移転という最悪のシナリオを「本市の責務（栃木議員発言）」と胸を張る。巨額な公共事業にメスを入れようという気概は、かけらも感じられない。民主党は国会議員と地方議員で方針が違うというのなら、ますます信用できない。議場で有権者を「知識が少ない」だの「ムードや感情に流される」と侮辱する、それが民主党の本当の姿なら、政権を任せることなどできるはずがない。民主党本部に、問題の発言（前述・福岡市議会での栃木議員の発言）について問い合わせたが、「県連に聞け」という。都合の悪いことから逃げるのも、また民主党の体質らしい。

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