脱税で城戸氏が逮捕される
2006年2月7日、城戸氏が1億8,000万円の個人所得税に関する脱税容疑で逮捕された。05年の5月あたりから脱税の疑いで調査されている、という噂は耳にしていたから、逮捕されたという事実に対し、驚くことはなかった。しかし、他人事ではあるが「あー勿体ないな。会社の業績は絶好調なのに、税金をくすめなくても良いものを!!」というのが偽らざる心境であった。2005年5月期において、売上169億円、経常利益3円億弱をあげ、且つ、06年5月期においては売上が待望の200億円を突破する勢いであったのだ。逮捕されるにまで事態が悪化したのは、城戸氏による脱税隠匿行為が、捜査陣の顰蹙を買ったからであろう。
ただ、この逮捕劇の裏側には、作州商事の社員であった某氏が城戸氏の手口を税務当局に打ち明けたということがあり、このことにより、査察に着手されたもののようだ。取引先、社員、友人・知人、そして樺島氏を含めた誰もが、城戸氏に諫言することをしなかった。一部には城戸氏に問いただそうとした誠実な友もいたが、城戸氏が聞く耳を持たないことを知ると、黙ってしまった。そこに「もう勘弁ならぬ」とばかりに怒った某氏が、摘発される契機となる材料を当局に持ち込んだのである。城戸氏にとっては予測不能の事態となったのである。
樺島社長の誕生
このシリーズ④でS氏のことに触れた。金融機関は事件に巻き込まれることを、一番嫌悪する。ましてや社長が脱税で逮捕されたとなると融資案件をすべてストップするようになる。それと不動産業は国による認可業である。業者は、認可を取り上げられたならば一巻の終わりだ。城戸氏の妻女が代表社長に就任するようなことがあれば、世間の目が許さないだろうし、社員たちの退社続発という事態も想定される。非常時において、樺島社長の誕生に非を唱える者はいなかった。「金融機関対策がスムーズにいくから楽になる」と、積極的な賛成者もいた。
2006年2月20日、取締役会で樺島専務が社長に昇格した。早速、弊社は『I・B』=06年3月30日号(№1121)において対談の記事を載せた。見出しには「拡大路線はやめる。信頼回復に全力」と銘打った。樺島新社長は、「城戸氏は非常に反省しており、『国税庁との見解の相違と所得税に関する認識不足から、今回の事件となってしまった』と言われていました。城戸氏を含め、私も声を大にして言いたいのは、脱税に会社は関与していないということです」との見解を高らかに掲げた。
また篠栗町門松の「エイルヴィラ門松駅前イーストサイド・ウェストサイド」に関するトラブル対策としては「資金的な問題を含めて立替が必要なのか、補修工事で解決できるものなのか、公の場で審議を尽くし、相互に納得できる解決策を早急に導きだすよう全力を傾注してまいります。こうした対応が、当社マンションの入居者や購入を検討されているユーザーの方々、また金融機関やゼネコンに対する信用回復に繫がっていくものと思っております。当社としましても、今回の件が社員やその家族のストレスにつながっていることが確かであることは理解しており、そのストレスをいち早く取り除くことが私の役割でもあります」と格調高い決意表明をしている。この新任の際の所信表明は、社長逮捕という会社存亡の危機を乗り越えれば、作州商事は素晴らしい会社になるのではないか、という予感を与えてくれたのだが―。(続く)
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