ブッシュは文字通りフセインの息の根は止めたものの、EUはもとより、BRICs(ブラジル、ロシア、インド、中国のいわゆる新興国)などもユーロシフトを強めつつある。しかし、先のクリントン時代からの「グローバルスタンダード」の名の下、強欲な金融機関は世界中の富を吸い上げるべく、デリバティヴ(金融派生商品)に代表される金融工学を駆使した怪しげな商品を次々と開発。世界中の金融機関にばら撒いてきた。その究極が金融危機の引き金となったサブプライムローンだ。
支払い能力のない人間にカネを貸せば金融機関は破綻するに決まっているが、それでもサブプライムは世界中にまるでウイルスのように拡大。ついに崩壊した。そこで登場したのが黒人大統領オバマである。
オバマの役割は何か。今の状況下ではまず金融危機に端を発した世界恐慌をいかに防ぐか、あるいは先送りしてその間に経済を立て直すかである。先送りないしは恐慌に陥ったときの手だての一つは戦争だ。「もし戦争準備を視野に入れているとすれば、予備役召集後の再訓練期間などを考慮すれば、大統領就任後3~4ヶ月で明確になる」(米軍情報筋)はずだ。
「しかし、今回のそれは過去と様相が違って複雑怪奇。カギは黒人ということです」
というのは米国政治ウオッチャーのA氏。すでに指摘されているように、米国にはKKK(クー・クラックス・クラン)に代表される人種差別主義者や白人至上主義者の団体、グループが至るところにあり、オバマには常に暗殺の危機がある。そうなったら米国は大混乱だ。
「さらにユダヤ批判が公然と語られるなど、1~2年前からアングロサクソンとユダヤ系の対立が表面化している。発端はブッシュがユダヤ系のネオコンに引きずられ、強引にイラク戦争に突っ込んだうえ、次にイランを標的に戦争の機会を常に窺っていたことになる。チェイニーに代表される彼らネオコン派に対し、軍の良識派、常識派がそれに抵抗するという図式がずっと続いてきた」(国際政治アナリスト)
政権内部の対立がそのままバックに付く国際金融資本や財閥グループ、軍や情報機関にも波及し、コントロール不能のままブッシュ政権は早々とレイムダック化した。その結果が黒人大統領の誕生と金融危機によるドル暴落、米国一極支配の終焉だ。
「だから帰還兵が増えたり、予備役召集もまず米国内の不測の事態に備えたものと解すべきです。オバマの新閣僚が決まり、無事に大統領就任式を迎えるまでが第一のヤマ。第二のそれは就任式後の半年でハッキリする。万一、オバマも否応なく戦争に引きずり込まれるとすれば、やはり、中東でしょう」(前出A氏)
10月中旬、米国とロシアの軍トップ同士がヘルシンキで秘密会談。米国内はもとより、中東、中央アジアなどで不測の事態が起きたときについて話し合ったといわれる。せめて軍同士だけでも意思疎通しておこうということだ。当面、米国の動向に目が離せない。(了)
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