ここで注目すべきは、商業施設の取得比率の高さである。福岡は、英情報誌「MONOCLE(モノクル)」が発表した「世界で最も暮らしやすい都市」のランキングでショッピング部門の第1位に選出された。とくに天神界隈にはオシャレな店舗、隠れ家的な店舗が多くあり、そうした地合いに魅力を感じた中央資本が都市型商業施設に投資するのもうなずける。
次に、物件の優良さを示す基準であるNOI利回りについて見てみよう。これは、賃料収入から諸経費を差し引いて残った純営業収益(NOI)を、物件の取得価格で割ったもの。つまり不動産投資に対する収益力を測る指標で、08年7月期時点のJ-REITの平均NOI回りは5.2%だった(対象物件数1,157件、東急不動産調べ)。そこで、ここでは5%をひとつの収益力の分岐点と考えたい。
すると直近では、7割弱が標準以上の物件ということになる。ただし全体を見ると、前期比で下落している物件の方が多い。とくに目立つのが都市型商業施設の下落ぶりである。
「博多リバレイン/イニミニマニモ」は前期2.3%だったが、直近ではわずか0.4%しかない。つまり投資物件としては、ほとんど収益を生み出していないということだ。ここは、日本リテールファンドが高島屋子会社・東神開発に信託受益権50%を72.2億円で売却して、07年8月1日より共同事業を開始しているが、それも功を奏していない様子。
1.6%も下落した日本コマーシャルの「パシフィーク天神」は、稼働率が70.2%で投資物件としては魅力に欠ける。ユナイテッド・アーバンの「天神ルーチェ」も、NOI利回りは4%台で稼働率も88.3%と立地のわりにはいまいち振るわない。クリード・オフィスの「大名バルコニー」もNOI利回りが1%台と低い。
先日、商業施設の調査のため中央区大名を歩いてまわったが、テナントスペースの3割程度しか店舗が入ってない施設もいくつか見受けられた。小売り不振は否めず、商業施設で収益力を上げるのは依然として難しいようだ。【大根田康介】
~つづく~