「トレハロース」を使用すること自体はまったく問題ないのだが、時を同じくして、業界では名門の「不二家」「赤福」などの不祥事が頻発。表示をめぐる消費者の反応が最大限に敏感になっていた時期だった。最大の繁忙期である年末にこの事実が発覚した。消費者からは「驕ったか」と厳しい声も上がったが、そうしたなかでも明月堂は「博多通りもん」を自主回収し、体制が整うまで販売を中止した。
販売再開後は「何の影響も感じられないほど強かった」(同業者)。消費期限を偽ったわけではなく、商品にも何ら問題が無かったことから、対処には他の選択肢があったかも知れない。しかし、過剰とも思える対応を即座にとったことで、消費者の同社に対する評価はむしろ上がったと言えよう。
課題を客観的に見つめ向き合う
同社は経営理念の見直しに着手した。94年に作成したときから時間を経て「必要に迫られてきた」と考える。「博多通りもん」発売後から15年が経過し、"超優良企業としての明月堂"しか知らない世代の社員が増えてきた。従業員の総数も215名まで拡大、大きくなった組織にふさわしい運営が必要になっている。
また、これまで躍進を支えてきた同族経営においても、後継者をどうするか未定であった。経営理念の見直しは、こうした課題へ先手を打ったということになるだろう。
これまでの苦難を糧にしてきた企業だけに、躍進期にこそ自社の課題と向き合う姿勢を見せる。「ピンチをチャンスに」という風土が、今日の明月堂を支えている。