政府・与党は、総額2兆円に及ぶ「定額給付金」の支給対象を限定せず、所得制限は行なわないという方針を固めた。所得制限付きの給付にすべきだと主張していた与謝野馨経済財政担当相も「高額所得者には自発的に辞退を促す」という麻生首相の方針を了承したという。今夕にもこの方針に従った制度が決まり、政府・与党内の迷走がようやく収まりそうである。
それにしても「給付金」支給問題は、野党はもちろん与党内部、国民からも不評を買っているが、これほどの“愚策”は近頃お目にかからなかった。
「生活困窮者」を助けるため、景気対策、はたまた消費を喚起するためなどと理由が並ぶが、まさに自民党の選挙対策。1人当たり1万2,000円といわれる金が日本中にばら撒かれるのだ。1票を1万2,000円で買う公金による事前買収だと断じたい。
新聞などの世論調査でも国民の多数が不要な政策だとしている。政府・与党がどんな美辞麗句を並べようと、常識では考えられない「政策」が堂々と国のトップの間で議論されている。悲しむべき現実だ。
金融危機を始めとして景気の急速な落ち込みで、中小・零細業者は資金繰りに追われている。彼らにとっては、経営建て直しに効果のある緊急政策を待っている。また高齢者は社会保障費の削減に身をやつしているのが現状である。バラマキでお茶を濁すようなやり方は政治とは呼べない。国民は決して騙されない。
2兆円という金額は、年々削減されている2,200億円の社会保障費の約10年分にあたる。新設の中学校なら400校も建てることができる金額だ。こうした事業に充当する方がよほど健全だ。
金融危機に「政治空白」を避け、経済対策をしっかりするために解散を先送りしたと麻生首相は主張したが、自民党内の手続きで誕生した麻生政権である。後世につけを回すような愚策はご遠慮願いたい。
この愚策を撤回し、麻生家の財産から2兆円を拠出して頂けるのであれば、話は別だが…。大胆な対策を打ちたければ、国民の審判を仰ぐべきだ。(AKIRA)