現空港の増設か、新空港かをめぐる福岡空港の行方は福岡県の一大政治テーマになっている。
福岡空港連絡調整会議による最終段階のステップ4が大詰めにさしかかっている中、麻生渡・福岡県知事の動向に大きな関心が寄せられている。
「増設か海上空港新設か」の最終判断は、国(国土交通大臣)が下すとはいえ、県知事の意向を踏まえる、とされているからである。県知事の一挙一動に関係者や県民の関心が注がれるのは当然のことであろう。
とはいえ、当の県知事の本心、本音がどこにあるのか、県議会議員の目から見ても分からない、という声があちこちから漏れ聞こえてくる。
県知事を支える与党・自民党のベテラン議員でさえ次のように語る。
「県知事とよく話をするが、どうも知事の本心がどこにあるのかさっぱりわからない」「意向を探ろうと思っても肝腎なことはしゃべってくれない」と・・・。
麻生知事は2002年、県として新宮沖の海上空港を念頭に独自の調査を始めたが、翌年の03年の県知事選挙を前に、対立候補が打ち上げた「新空港反対」の争点をずらすため、事実上海上空港を断念したいきさつがある。その後麻生知事は、調整会議によるPIが進展する中でも、言質をとられるような発言は避けてきた。現段階ではっきりしているのは、「今年度中(3月まで)に結論を出す」という知事の言葉だけである。
「今年度中(3月まで)に結論を出す」という知事の言葉だけが独り歩きし、様々な憶測を呼んでいることも確かで、「新空港派」は知事が増設に踏み込んだと理解し、「新空港反対派」は逆に、知事が新設に踏み込んだと感じ、双方とも危機感を露わにしている。
地元財界でつくる「促進会議」は、新空港建設に走り出している。「確信犯」(ある県議の弁)である地場大手企業は、自らの負担額は明らかにすることなく国に対して多く金を出すよう、運動を強めているという。またある民間団体は多額の宣伝費を使って地方紙に「新空港を」という意見広告まで出している。新空港建設に向けた圧力は強まるばかりである。
こうした雰囲気の中で空港周辺住民は、「跡地利用や生活保障の見通しも明らかにせずに新設に走ること」に対し、苛立ちと不安を訴えている。
「麻生知事はぶれている」と評する人もいるが、「知事は信念の人、既に決断しているが時を待っている」と語る人もいる。本心は当の知事の胸の中、憶測は避けなければならないが、知事の「決断」を左右する材料が足元に押し寄せていることも確かだ。
それは、これまでの説明会や意見交換会でも明らかになったことだが、「海上新設案」に圧倒的多数が反対している、ということだ。それと、解散・総選挙、政権の行方である。
前出のベテラン議員は中央政局と知事自身の身の振り方について、興味ある話をしてくれたが、微妙な問題であるので記述は避けるが、いずれにしても知事の「決断」の日はそう遠くない。
前述のように新空港反対派が「民心」であることを勘案して、将来に禍根を残すことのないような「決断」を知事がされることを願うばかりである。