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政界インサイドレポート

麻生政権「タイタニック現象」が始まった(上)
政界インサイドレポート
2008年11月25日 10:29

 麻生政権は発足からわずか2ヶ月で完全に末期症状を呈している。何でも自分が決める”ワンマン型首相”といわれたが、麻生首相は「政局より政策」と解散・総選挙を先送りしながらこの臨時国会に補正予算案を提出できないし、「抜本的に見直す」といっていた後期高齢者医療制度にも手をつけようとしない。首相発言のぶれによる朝令暮改の政治には指導力のカケラも見えない。
 解散先送りという麻生首相の選挙戦略の失敗がそうした求心力の低下を招いたのは間違いないものの、しかし、それは首相1人の責任とはいえまい。自民党は安倍、福田両首相の政権投げ出しの後、「選挙管理内閣」として麻生氏を選んだが、もはや自公連立には”首相の個人的人気”で政権を維持できるほどの国民の支持はないのだ。
 それなのに、与党内にはまたぞろ「看板掛けかえ」という不穏な蠢きが見え隠れしている。いつまでこんな政治を続けるのだろうか。

◆与謝野の造反
「こんなに骨のない男とは思わなかった」
 経済運営の舵取りを担う与謝野馨・経済財政相が側近にそんな首相批判を口にしたのは、2兆円の定額給付金に「所得制限」を設けるかどうかで閣内が割れた時だ。
 麻生首相は「高所得者に給付金は必要ない」「オレはもらわない」と、いったんは与謝野氏が主張する所得制限に賛成したが、盟友の中川昭一・財務相や鳩山邦夫・総務相らが所得制限に反対して巻き返すと、自分では決断できずに最後は「自治体の判断」と責任を放棄した。
 与謝野氏は返す刀で中川財務相をこう切り捨てた。

「あんなバカとは思わなかったよ」
 与謝野側近の自民党幹部はこう語る。
「与謝野さんは総選挙延期論者で、『今は政局より政策が優先』という麻生首相の解散先送りを支持していた。それなら公明党向けの選挙対策である2兆円バラ撒きなど必要はない。金融危機対策に取り組むべきだ。与謝野さんが閣内不一致を覚悟で所得制限を言い出したのは、麻生首相が解散先送りの口実に金融危機を使っているのか、それとも泥をかぶっても無意味な2兆円バラ撒き政策を転換して経済政策に本腰を入れて取り組むつもりなのかを試すためだった。結局、麻生という人に本気で経済を立て直す力量はないし、中川財務相には与謝野さんの投じた一石の意味さえわかっていないと失望した」
“骨のない”総理大臣と“バカ”な財務大臣にこの金融危機を乗り切れるはずがないという判断だ。

 与謝野氏のバックにいるのは「ナベツネ」こと渡辺恒雄・読売新聞グループ本社会長だ。自民、民主の大連立構想の仕掛け人だったことで知られる渡辺氏は、まだ“救国連立”の構想をあきらめていないと見られており、与謝野氏や与謝野グループの番頭格である園田博之・自民党政調会長代理らと会合を持っている。
「ナベツネは早くも麻生政権に見切りをつけ、与謝野氏を軸にした小沢民主党との連立政権の可能性を探っている」(先の与謝野氏側近)という。
 しかし、大連立とは形を変えた自民党政治の延命にすぎない。自民党政治そのものが完全に行き詰っている今、“談合政治の亡霊”のような渡辺氏が政治的影響力を行使しようというこの国の政治の体質を根本的に改めない限り、日本に新たな政治の時代は来ないのだ。

つづく

   

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