市民病院の民間移譲を巡り、佐賀県武雄市が揺れている。市役所に「がばいばあちゃん課」を創設し、レモングラスを特産品として売り出すなど強いリーダーシップで市政改革に取り組んできた樋渡啓祐・前市長。市長が打ち出した武雄市民病院の民間移譲に医師会などが強烈に反発し、事態はリコール請求に至った。
桶渡前市長はリコールを回避するため今月21日付で市長職を辞職。12月28日投開票の出直し市長選で民意が問われることになる。武雄で何があったのか―。
市民病院「池友会」へ移譲
人口約52,000人の温泉街。市街地から1キロほどゆるやかな坂道を登った丘の中腹に、小ぎれいな病院が立っている。武雄市民病院は2000年2月、国立療養所武雄病院の経営を国から引き継ぐ形で開設された。
市によると、05年度から医師が減り、2007年度末の累積赤字額は約6億3,900万円。今後も赤字の増大が想定され、一般会計からの支出も避けられない見通しという。
このため市は、「必要な医療を残すため」として昨年11月に「民間移譲または独立行政法人化」の方針を打ち出し、今年6月に移譲先を公募した。結果、2010年2月からは、福岡和白病院など大病院を経営する「池友会」(鶴崎直邦理事長、北九州市)に移譲することを決定した。市内の「交通の便の良い場所」に移転し、立派な病院を新築開院する計画だ。
リコール回避で出直し選挙
こうした動きに対し、地元医師会など民間移譲反対派は「市長が相談なしに強行している」「民間移譲ありきだ」などと反発。開業医や一部市議らで「武雄市民病院問題対策室」を結成し、民間移譲を撤回しなければリコールを行うと表明した。対策室が「武雄市長リコール推進対策室」と名前を変え、リコールの手続きに入ったことを受け、市長は「リコールが始まれば市政に混乱を招く」として辞職することを決意した。
11月21日。対策室はリコール運動を選挙管理委員会に申請した。が、同日の市議会で市長の辞職が同意されたため、リコールは「棄却」となった。また同日、市選管は市長選の日程を12月21日告示、同28日投開票と決めた。桶渡・前市長は27日午後3時から出馬会見を行い、選挙戦のマニフェスト(医療版)を発表する。一方反対派は候補者の擁立を模索している。(つづく)