26日、東区の奈多公民館でこれからの福岡空港を考える出前説明会が開かれた。主催は奈多校区自治協議会である。
この中で、福岡市議会議員の今林秀明氏は、「海上空港は騒音等のデメリットを知った上で、町の発展の可能性がある」と事実上新空港誘致を表明し、参加した住民を新空港建設へと誘導する発言を行なった。

　説明会には、約80名の住民が参加、国土交通省、県、福岡市から4名が出席しＰＩレポートの説明を行なった。その後参加した住民から、「需要予測の根拠がおかしい。新たな経済情勢の変化などを考慮すべきだ」と右肩上がりの需要予測に疑問の声が出された。また「自然環境の変化、地形の変化が心配だ」「新関西空港のような地盤沈下の恐れはないのか」と自然環境の悪化を心配する声が相次いだ。

　これに対して国からは「増設か新空港かが決まった後に新たな需要予測を出す必要もあり、その結果では議論が後戻りの可能性もある」と回答。また国の考え方として、「新宮・三苫ゾーン」の空港へのアクセスとして海底トンネル構想があることを初めて明らかにした。
参加者から、新空港は「膨大な事業費がかかり、税金の負担が重くなってくる」と次世代へ負担の先送りをすることへの不満と不安の声が出された。こうした声に、国側は前回と同様「あくまでも目安として事業費を示しただけ」だと説明する。また「騒音の心配はない」とする説明について国としては「騒音対策をする必要がないという範囲内」の騒音はあると補足した。

　説明会は前述のとおり、奈多校区自治協議会の主催で行なわれたとされるが、会場の公民館に足を運んだ時から奇異なものを感じた。

　ひとつは入り口に受付簿が置いてあり、用紙に町内名と名前を記入することになっていたことだ。「まるで思想調査だ。誰が参加し、どういう発言をしたかをチェックするものでこういう場にふさわしくない」と校区のある人は言う。こうしたことは説明会が開催される前から予想されたことでもあると別の人は語る。この説明会は、ある筋が自治協議会で開くように依頼し、「新空港賛成の機運をつくる」ために説明会を利用しようとする動きがあった、ということだ。つまり自治協議会が主催することで、地元に新空港建設の期待があることを印象付け、また連絡調整会議にとっても出前説明会が開かれることは「実績」にもなることから一挙両得というわけだ。しかし説明会の冒頭から「校区外」の参加者が発言したことで、主催者は「ここは賛成、反対の意見表明の場ではない」とあからさまに不満の表情をあらわし、一部からは「ここは校区外がものを言っていけない」と口にする人すらいたのである。何をかいわんや、である。発言を求められても地元校区の人が挙手をせず、「校区外」の人がわずかに3人、発言したに過ぎなかったようだ。校区の新空港賛成派らしき人がせいぜい「現空港は利便性はあるが、危険性は大である。新空港が経済的にプラスになる…」と根拠もなく発言するのが精一杯ではなかったのか。

　こうした事態にあわてたのが閉会の挨拶で登場した今林秀明・福岡市議である。なぜ市会議員がこの場で発言するのかこちらが驚かされたが、自治協議会顧問としての今林市議の発言は、新空港を推進しその方向に住民を誘導しようとするものであった。

　今林市議は、この説明会に多数の校区外参加者があったと決め付けたうえ、「校区だけの参加者のつもりであったが、校区外から参加するなら市が主催するべきだった」と校区外からの参加者は余計なものだったと言わんばかり。これは前述の「校区内だけの参加者による推進合唱の場」として説明会を開こうとしていた狙いとも符合する。

　更に今林市議は、「需要予測はだれにもわからない」と言いながらも「福岡市の人口はこれから2025年まで発展していく」という需要予測を根拠に「福岡は今後も発展していく」と矛盾した発言をおこなった。また「ＷＥＣＰＮＬ75」という航空騒音の数値を「この数値は犬が24時間中、1分間に15回（計15分間）吠えるぐらいのもの」とはなはだしい騒音軽視の発言を行なった。そのうえで今林市議は、自然環境や騒音などのデメリットもあるということを知った上でも「新空港で町が発展する可能性がある、という観点で考えていく必要がある」と発言。

　今林市議は「ここは賛成・反対の表明の場ではない」と言いつつ、新空港推進という自らの立場を表明し、参加者に対して議論の誘導を行なったものである。しかも自治協議会の顧問という立場を利用してである。

　今林市議の発言内容と同時に、議員が自治協議会の顧問という組織のありかたも問題ではないだろうか。