問題の取り立て手法
「福岡アセットファイナンスが元の商工ファンドだと知っていたら借りなかった」とA氏が悔しがるのも無理はない。しかし、たとえ返済が遅延しなかったとしても、A氏が9月には同じ憂き目に遭ったのは間違いない。SFCGは9月ごろから遅延もしていない債権者の保証人に残額一括返済、あるいは追加担保を求めるなど、いわゆる貸しはがしを加速させたからだ。
それは日を追うごとに度を増し、10月には全国いたるところで同社の貸しはがしに悲鳴をあげた中小企業主が続出。各地の弁護士会や「日榮・商工ファンド対策全国弁護団」には被害相談が殺到した。10月31日には東京や福岡など7カ所で、SFCGに対し損害賠償(慰謝料)請求の集団訴訟まで起きたのは周知の通りである。
同社の貸しはがしは国会でも問題となった。金融庁も「違法」との認識を示しているだけに、今後の展開はおそらく前回の「商工ローン問題」同様、その取り立て手法が問題になりそうだ。というのも、同社は10月の回収目標を500億円と設定、10分に1回、3日で100回電話による催促という手法で回収すると伝えられているからだ。前回同様、「腎臓を売れ」「目玉を売れ」式の恫喝、脅迫的言辞などがあるのかどうかはともかく、債務者側の一般人としての常識、道義と貸し手側の法律論争になる可能性大だ。
しかし、そんな法律の狭間ではなく、オレオレ詐欺流の確信犯としか思えない所業が同社にはある。簡単にいえば、子会社に債権譲渡したにもかかわらず、依然として債権があるかのような公文書を取得しているからだ。それがどう使われたか、あるいはどう使われるかは別の問題だ。何らかの目的がなければ、そんな公文書をわざわざ取得する理由はない。 矛盾だらけの債権譲受
発端は約10年前の平成9年だ。東京の有名料亭がSFCG(当時の商工ローン)から融資を受けるとき、担保を提供したのが同料亭の常連であるN社。同社は、自社の土地建物を限度500万円として料亭に担保提供した。前出のいわば保証人的立場だ。それから料亭が返済を続けて、残額も100万円台に減った昨年8月初め、N社に債権回収会社からSFCGの債権を譲渡された旨の通知が来た。
当の債権回収会社、いわゆるサービサーはSFCGの子会社であるジャスティス債権回収。「債権譲受のお知らせと債権債務関係のご確認」と謳われたそれによれば、平成19年6月20日にSFCGの債権を譲受したとあり、債務者名、譲受債券額、そして貴殿根保証額として500万円が記されている。
N社のO社長がいう。 「債権譲受額が約1,100万円ととんでもない数字になっているけれど、そんなものどうでもいい。根拠を糺せば分かることですから。問題はその1カ月後の8月29日、SFCGが東京地裁に債権届出書を提出、同31日に受け付けられていること。すでに債権譲渡しているにも関わらず、何のためにそんなことをするのか。そんなものを簡単に認める地裁も地裁です」。
SFCGが受領した債権届出書によれば、平成9年当時、主債務者の料亭が3回にわたってSFCGから借りたのは約720万円。先のように、料亭側はこれまで一時的遅延があったとしても、返済し続けて着実に元金を減らしている。にもかかわらず、債権届出書の「元金現在額」が10年前の約720万円のまま記載されている。これも虚偽記載だ。上場企業がこんな虚偽と矛盾だらけの行為に走るとはどういうことか。単なる手続きミスで済む話ではない。
SFCGに取材依頼したが、調査に時間がかかるとあって現時点ではまだ回答を得られていない。追って結果をリポートしたい。
恩田 勝亘【おんだ・かつのぶ】
1943年生まれ。67年より女性誌や雑誌のライター。71年より『週刊現代』記者として長年スクープを連発。2007年からはフリーに転じ、政治・経済・社会問題とテーマは幅広い。チェルノブイリ原子力発電所現地特派員レポートなどで健筆を振るっている。著書に『東京電力・帝国の暗黒』(七つ森書館)、『原発に子孫の命は売れない ― 舛倉隆と棚塩原発反対同盟23年の闘い』(七つ森書館)。