藤賢一氏の想い届くか
アパレルに重きを置く商業施設が、日本でも苦戦しているのは周知の通り。観光客が多いキャナルシティでさえも、「中国人などの観光客のおかげで施設に訪れる人数は増加した。しかし、洋服などのアパレル系はあまり売れない。理由ははっきりと分からないが、好みやサイズなどが日本人とは合わないからだろう」(福岡地所幹部)と、厳しい現状が横たわっている。
南京水游城はテナントの一部の開業が遅れており、また「ちょっと施工の質が悪いのではないか。床石の材質も悪いし、もっと管理の部分で改善する必要がある」(ガイドの流通業者社長)との意見もある。ソフト(テナント)面もさることながら、ハード(建物)面の徹底した管理が求められている。
南京水游城の出店を決意した藤賢一氏は、アメリカで設計を学び、キャナルシティ建設時にはその能力をいかんなく発揮した。テナント誘致も藤氏の力が大きかったと言われている。
上海のビジネス情報誌『BizPresso』のインタビューに対し、藤氏は「南京はこれから大きな発展が見込まれる都市。南京市民に愛されるような、また人々が回流するような施設にしたい」と答えた。また、西日本新聞のインタビューに対しては、「これからは上海や武漢など複数の候補地がある。日本や九州に閉じこもっていてはダメだ」とした。
その気概、想いは同じ福岡県人として誇りに思う。だが現状、南京水游城は回遊性を高める装置にも人々に愛される施設にもなり得ていないのではないか。開業時から正念場と言っても過言ではないだろう。この施設の成功いかんは、藤氏の想いの強さと、それがどれだけ南京市民や運営スタッフに伝わるかにかかっている。 (了)
【大根田康介】
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