またもや社長解任が起きた。大証2部に上場している婦人下着訪問販売のシャルレ(旧テン・アローズ、神戸市)は12月2日、創業家の林勝哉社長(39)を解任。後任には岡本雅文執行役(44)が就任した。
解任の理由は、創業家一族を中心とするMBO(経営陣が参加する買収)について、価格設定などで林氏が不当に関与したため。林氏が打ち出したMBO計画には「価格算定手続きが違法」とする内部告発が続出。社員が決起した反乱によって、林氏は追放されたのが実情だった。反乱の種は、1年半前に林氏自身が蒔いていた。
マルチまがい商法
2007年6月27日のテン・アローズ(現シャルレ)の株主総会。創業者の長男で大株主の林氏は修正動議を出し、女子バレーボール元日本代表の三屋裕子社長(49)ら7人の取締役を電撃解任し、自ら社長に就いた。
総会直後の会見で、司会を務めた社員が「非常に残念です。周りの社員も多くが同じ思い。お願いして来ていただいたのに、非常に失礼なことをしてしまいました」と述べた謝罪に、堰を切ったかのように涙があふれる三屋氏の姿が放映され、同情を集めた。あのシーンで、創業家であることを笠にきて、三顧の礼で迎えた社長を解任した林・新社長は完全に悪者になった。
シャルレの創業者、林雅晴氏(73)はマルチ商法出身者のなかで株式上場を果した出世頭として知られている。和製マルチ会社の第1号は1969年に営業を開始したスワイプ・ジャパン。商品は洗剤。会員になれば卸値での製品購入資格を得、さらに友人・知人に購入させれば昇格していく仕組み。しかし、過剰在庫をさせられたなどの被害者がでて、悪徳マルチ商法として社会問題になった。スワイプ・ジャパンの代理店をしていたのが林雅晴氏だった。
社会問題になってスワイプを離脱。75年、林雅晴・宏子(70)夫妻は女性用下着の訪問販売を始めた。シャルレの前身だ。マルチ規制にひっかからないように、試着会というホームパーティを開き販売する方式を取り入れた。製品の愛用者をセールスの先兵として活用する販売方式で、製品愛用者を増やしていけばマージン率も上がる仕組み。愛用者活用方式ならマルチ商法にはあたらないとみなされたためだ。
同社は、90年に店頭登録、98年に大証2部に上場し市民権を得た。創業者である林雅晴氏は04年、林宏子氏は06年に退任。それぞれ9億円の退職慰労金が支払われた。
2000年代に入り訪問販売はネット販売に押され赤字経営に。04年に当時会長だった宏子氏が集客力を高める切り札として三屋氏を社長に迎えた。全国を飛び回り、広告塔の役目を果した三屋氏を問答無用で解任したため、社員たちは二代目に対する反感を募らせた。(日下淳)
つづく
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