反対派の候補者擁立難航
武雄市民病院の「池友会」(蒲池眞澄会長、北九州市)への民間移譲を巡り、武雄市の出直し市長選挙が12月21日告示、28日投開票で行なわれる。地元医師会など移譲反対派によるリコールの動きを受けて市長職を辞任し、再選を目指す樋渡啓祐氏(39)。その対抗馬が誰になるのかが注目されているが、告示まで残り2週間を切ったいまも、反対派グループは候補者を擁立できていない。
立候補予定者説明会が今月5日に武雄市役所で開かれたが、説明会には、前市長の陣営からは民間移譲賛成派の市議が出席。対する反対派グループは立候補予定者を空欄にしたまま市議や医師会などの関係者が出席した。前市長の辞職直後に「12月5日までには擁立したい」としていた反対派グループだが、現状では「話を持ちかけている3人から5人の誰かにお願いすることになる。できるだけ早い時期に決めたい」といい、選定は難航している。
対抗馬が決まらない背景には、反対派グループのメンバーが自民党市議、共産党市議、医師会などの寄り合い所帯となっていることや、前市長の素早い辞任を想定していなかったこと、外向きの政策を売り出してきた若い前市長に対し、神輿に担がれる候補で「勝てるのか」といった懸念もあるようだ。
両陣営の動き
樋渡陣営は順調に選挙準備を進めている。市民病院の問題に内容を絞ったマニフェストを発表し、7日には事務所開きを行なった。地区集会も頻繁に開き、直接市民に民間移譲への理解を求めている。市も広報紙などで事実上バックアップをしており、陣営は手応えを感じているようだ。
しかし根強い反発もある。マニフェストは、市民病院の充実を約束する内容となっているが、これについては中立の立場という市民でさえ、「医師会の協力が得られないならば病院が孤立する」「市が手放そうと考えている病院なのに、民間移譲して市長の約束が守られる保証はない」と指摘する。
反対派グループは、8日に市長選の活動母体となる政治団体「明るい武雄市をつくる市民の会」の設立を佐賀県選挙管理委員会に届け出た。武雄杵島地区医師会副会長の副島義久氏を代表者とし、候補者の選考を急いでいる。候補者には医師会や一部県議、市議らからの支援は約束されているが、立候補が決まったとしても、マニフェストの作成や選挙準備などを短期間で進めなければならず、擁立が遅れるほど戦いに影響することは必至。民間移譲か、市営での存続か―。あすの地域医療の行方にも影響しかねない大きな問題を争点とした市長選だが、市政の課題はそれだけではない。「対抗馬には厳しい選挙になるだろう」との見方が広がっている。
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つづく
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