上野公成元官房副長官側の言い分にはかなり無理がある。「控え室で政治資金パーティを開いたから会場費などは発生しなかった」としているが、企業のパーティ券購入が可能となるのは、催物がなされ(対価の支払いをなす企業に対し、当該対価の支払いが政治資金パーティの対価の支払いである旨を書面で告知する必要もある)、あくまでもその催物への対価を支払うということが前提。控え室にただ集まっただけというのなら、その内容によっては、政治資金パーティと見なされない可能性が生じる。控え室で誰かが政治談議をして、お茶を飲むだけで「政治資金パーティ」と見なすのなら、政治資金規正法はザル法だとの非難だけに止まるものではない。主催者や支出をした企業は、法の趣旨を踏みにじったのも同然だ。元官房副長官の要職にあった政治家が成すべき行為とは思えない。
残念ながら、上野元副長官側の言い分からは、遵法精神を感じ取ることはできなかった。
上野氏の元政策秘書に対する取材内容の続きは次のようなものである。
Q:霞山会館における政治資金パーティの中には、会場費が極端に安いものがある。これはどういうことか?
A:弁当代、コーヒー代だけかもしれない。
Q:ずいぶん便利なパーティだが?
A:お金集めるためやってるんだから。
Q:赤坂プリンスでは、本当は1回のパーティしか開かれていないのではないか。霞山会館のパーティではわずかな会場費も計上しているではないか?
A:いや、間違いなく2回やっている。
先述してきたとおり、赤坂プリンスホテルで開催された政治資金パーティには、全く同じ傾向が見
られる。06年・07年、同ホテルで開催されたパーティは14回。会場費が発生したのはパーティの収入総額が1,000万円を超える「特定パーティ」か、それに近い金額(916万円)を集めた1回を含む計7回分だけである。それ以外の7回は、特定パーティもしくはそれに準ずる規模の「本会場で開催されたパーティ」の「控え室」で別のパーティを開いたという。控え室だから会場費は当然かからないと言う論法だが、これはおかしい。政治資金パーティの収入は、催物に対する対価である。催物である以上、何らかの経費がかかるのが普通である。政治資金規正法は政治資金パーティについて第8条で「対価を徴集して行なわれる催物で、当該催物の対価に係る収入の金額から当該催物に要する経費の金額を差し引いた残額を当該催物を開催した者又はその者以外の者の政治活動に関し支出することとされるものをいう」と規定している。
元政策秘書が言うように「コーヒーくらい出した」としよう。しかし、そのコーヒー代や会場費が、直前に開いた本会場でのパーティ開催経費に算入されていれば、「控え室パーティ」は本会場パーティの単なる延長ということに過ぎない。「控え室パーティ」の経費は、あくまでも「控え室パーティ」の主催団体が支払うべきものだからだ。元政策秘書は、取材に対し「控え室だから会場費がかからなかった」と明言している。それこそ「控え室パーティ」が、本会場パーティの延長だった証ではないか。
そして、前述の元政策秘書とのやりとりには、さらなる疑惑が存在する。
1日2回のパーティが開催された06年11月21日の会場費の記載と領収書
この日は、これ以外に会場費の記載がない
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