崩壊寸前の生コン業界
生コン業界は崩壊寸前にある。生コンの消費量は、全国的にもピーク時に比して半減状態となっている。(株)味岡の本社があるあさぎり町地区も、同じ状態にある。
生コン業界の歴史は浅い。せいぜい40年の歴史である(業態としては昔からあったが、独立した業種として成り立つようになったのは、昭和40年頃から)。40年前から生コン御殿が全国津々浦々に建ちだした。業界の経営者達が生コンオーナーとして財をなしえたのは、公共事業の予算が全国にばら撒かれたという時代背景があったからだ。まさに良い意味での歴史的価値観の激変に、翻弄されたのだ。
ところが時代は一変した。生コンオーナーたちは「会社を閉めたり売り逃げをしよう」との企みを抱いて、躍起になっている。味岡社長のところには毎日、「生コン工場を引き取ってくれ!!」との相談が押し寄せてくる。12月ですら、沢山の案件が押し寄せてくる。例えば本州中部地区からは、コンクリート二次製品メーカー(従業員1,200人)から、副業で経営している生コン工場2ヵ所を引き取ってくれるよう要請があった。このメーカーが本拠とする地区では、組合に属さない強力なアウトサイダー業者が辣腕を振るっているので、販売は単価競争になっているという。
回答の期限は12月25日であった。味岡社長としては「OKです」と前向きの返事をする予定でいた。ところがだ。12月の初め頃、先方が中部地区からわざわざ人吉の奥までやってきて「自力で事業続行します。済みません」と謝罪したのである。理由を聞くと目障りなアウトサイダーから「味岡さんが介入するのであれば、厄介なことになる。組合に加入して地場と協調します」との申し出があったそうだ。「この強力な業者と協調できれば、経営を容易に黒字に転化させることができるので、譲渡する必要がなくなった」という虫の良い撤回通知であった。
味岡氏は内心で「ふざけるな!!」と叫んだが、顔ではにっこりとしながら「結構なことになりましたね」という言葉を送り返した。「何故? 生コン業者が味岡社長に救済を懇願してくるのか」という命題については、次項以降で紹介していこう。同氏は腹のうちでは「チャンス到来だ。全国100ヵ所の工場買収に挑戦してみよう」と、大なる野望に燃えている。殿様商売をやってきた生コンオーナーのオヤジたちが、眼前の難関を突破することは不可能だ。
共販制度が認められているからこそ
百戦錬磨の味岡氏は、筆者の腹の中をとっくに見透かしている。「コダマさん!! 『こんな斜陽の中にある生コン業界で買収を拡大して行けば、いずれ破綻するだろう。軽率なオヤジだ』と、軽蔑しているでしょう。ご賢察のとおりですよ。私だってこんな嫌な世界からは足を洗いたい。ただ、生コン業界では、組合を前提とした共同販売事業が認められていますよね。価格協定が認められていることはご存じの通りです。各地区で、生コン製造業者が組合を運営し、相互に協力することができるようなインフラが整備されれば、充分に報われることができる経営が、可能になります。だからこそ、組合運営を健全化できれば、全国どこでも商売できます。法律で守られている共販制度が消滅すれば、生コン製造ビジネスは木っ端微塵になります」と熱弁が続く。(つづく)
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