全国制覇への予感を掴む
「業界トップとなるにあたって、ライバルとなるのはどこですか?」と質問したら「元は敦賀セメントと呼ばれていた三谷商事だ。東京証券取引所にも上場しているし、桁違いの力をもった会社である。この1社だけが富士山のごとき存在だ。生コン工場を50ヵ所も有しているのだ。このダントツ企業にはとてもじゃないが、逆立ちしても追いつけない。しかし2番手になれる可能性はある。必ずなってみせる」と、味岡社長は堅い決意を示す。
三谷商事について調べてみると、確かにとんでもない会社だ。福井県のトップ企業である。同グループの事業のなかにはセメント・生コン・建設資材といった部門も含まれているが、グループ全体における事業規模のウェイトは低い。ネット関連事業など、時代にマッチした事業の躍進著しく、2009年3月期の連結売上は3,540億円にのぼるとみられる。味岡生コンクリートグループの年商が80億円であるから、その眼前に、45倍の規模で立ちふさがっているのが三谷商事だ。勝負にならない。
だが、よくよく調べてみると、生コン事業は近々、三谷商事にとって厄介ものとなる可能性を内包している。グループの他部門と比較すると、生産性が乏しい生コン事業は、魅力に乏しい存在となってゆくのではないか!! 筆者は、味岡社長に将来の見通しを伝えた。「三谷商事と正面から戦うのは、玉砕の可能性を多分に含んだ邪道な策です。ですが、向こうさんの方が、生コン事業を放逐することも予想されます。その時は、同社の生コン事業を引き取らせてもらいましょう。そうなれば、必然的に御社グループが生コン事業の日本一になることが想定できるではありませんか」と。味岡社長も「なーるほど。そういうこともありえるな」と喜色満面になった。
シリーズ(4)では、熊本市における2ヵ所の工場運営に成功したことにより、味岡社長が「熊本県一、九州一」への展望を抱き、自信を持つに至ったことを述べた。ところが「本州、全国で、果たして通用するか」という問いには不安が残った。そこに降って湧いてきたように、買収打診の話が寄せられてきたのである。広島県尾道市にあるメーカーからの相談であった。この尾道の案件は現在、広島味岡生コンクリート株式会社として、活発に活動している。尾道での成功は味岡氏に「全国展開も不可能ではない」と結論づけさせることになる。
グループ経営の現状は!!
下記の「味岡グループ組織図」を参照されたし!! 生コン事業では12社23工場を擁している(やがてプラスワンされて24ヵ所となる)。生コン事業の売上はピーク時には90億円あったが、現在は80億円となっている。このほか関連事業会社が7社ある。味岡社長は現在、61歳。事業の後継ということについても手をうっており、リース部門を長男、生コン事業を二男(熊本常駐)、商事事業を三男に託するという、布陣をしいている。兄弟の仲はすこぶる良好である。
シリーズ(7)で触れるが、味岡社長本人は関連会社視察、各地区の生コン組合の定例会への参加、事業買収ビジネスなどで飛び回っている。本社に滞在している(?)のは1週間に1日程度と、超ハードな職務をこなしているのである。午前中は大分、昼は福岡、夜は宮崎と、自ら運転する車で九州をほぼ一周するのが日課だ。極めてタフで、強靭な経営者である。(つづく)
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