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地雷問題をあらためて考える 2007年度駐在員 由見裕也氏 | CMC現地駐在員レポート(4)
特別取材
2008年12月18日 15:35

 「7人の撤去員が亡くなりました。あの女性撤去員も…」NGO関係の知人からの突然の電話でした。当時現地赴任直後の僕が、つい1週間前に研修で訪れた地雷原で対戦車地雷数個が同時に爆発し、近くにいた地雷撤去員の体がバラバラに吹き飛ばされたということでした。茫然自失でした。一瞬にして恐怖が骨の髄まで侵食してきました。もしかすると自分も被害に遭っていた可能性があったのです。お会いした女性撤去員の笑顔は、今でも鮮明に脳裡に浮かびます。本当に残念でなりません。赴任して間もない時期で、一番印象に残っている出来事です。

 カンボジアで毎日のように起こっている地雷被害。地雷問題の裏側では、貧困問題や教育問題など、数々の問題が絡み合っています。収入を得るため、地雷があることは分かっていても、畑を耕すために地雷原へ足を踏み入れる農民。家の農作業を手伝わされ、学校をあきらめたために地雷について教育を受けておらず、何も知らずに地雷や不発弾をおもちゃにして遊んだり、池に投げ込んで魚をとる子どもたち。地雷について警告する看板の字が読めないために地雷原に入りこんでしまう子どもたち。本来は助かるはずなのに、道路状況が悪いために搬送に時間がかかり、命を落としてしまう地雷被害者。全て実際に現地で見聞きしてきたカンボジアの現実です。地雷問題はそう単純ではないのです。

 CMCはこのような地雷問題を根本的に解決するため、教育分野にも力を入れてきました。ボップイ安倍小学校の管理や、新たな中学校建設を準備する仕事では、正直、非常に苦労しました。しかし、教育こそが地雷問題解決の原点であると思い、必死に走り回りました。現在、自分の仕事が後任の力を得て、実際に効を奏してきており、嬉しく思います。

 地雷は、踏めば死ぬか、命は助かっても困難な人生が彼らの前に立ち塞がります。さらには、被害者の家族は大切な人を失ったことで耐え難い悲しみに襲われるとともに、経済的にも損失を被ることになります。このように、実際に被害を受けた人だけでなく、その家族も広義には地雷被害者といえます。被害者はかわいそう、というイメージを当初持っていました。しかし、カンボジアには地雷の被害に遭っても頑張っている方がたくさんいます。僕は逆境を乗り越えていく被害者の皆さんに多くの勇気をもらってきました。

 ラジオ事業では、そういった人たちの声を主に詩という形にして電波に乗せてきました。聴取者へのアンケートの結果を見ると、この番組が多くの地雷被害者の皆さんを救い、聴取者の間に人権意識を定着させることができたことがわかります。このようなメンタル面での地雷被害者の救済は他に類を見ません。しかしながら、非常に重要な分野であり、CMCのラジオ事業は実に意義のある活動です。

 世界にはおよそ50万人もの地雷被害者がおり、それぞれの思いを抱え、日々生活しています。地雷による被害を食い止めるだけでなく、子どもたちを含め、被害に遭った人たちのその後の身体的・精神的ケアを行なっていくことも重要だと考えます。私たちにもできることはたくさんあります。先ずは、知ることから初めて下さい。皆が互いに興味を持ち、思いやりを持てるようになれば、戦争なんかなくなるのではないでしょうか。

CMC現地駐在員レポート

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