徹底した平等主義を貫く
宮崎市エリアから外れた場所にある児湯郡新富町にある宮崎味岡生コンクリート(株)の新富工場を、宮崎地区の組合に加入させた。「組合に是非、加盟してくれ!!」という要請があったからだ。宮崎地区の組合もオーナー達の面子のぶつかり合いで足並みが乱れていた。そこに乗り込んだ味岡氏は、徹底した平等主義を掲げた。要は組合員が納得するシェアの割り振りである。このシェア割り当てが確認できれば、必然的に価格も持ち直しが容易になる。理屈はわかるが、過去の経緯もあり、オーナーたちのあいだでは、疑心暗鬼の感情が沈殿していた。
この卑しい人間の性根を見抜いている味岡氏は、まず組合に加入している会社が所有している生コンミキサー車の車検証(コピー)を提出させる(営業車の台数をすべてオープンにさせて、誤魔化しを許さない方策)。また従業員の社会保険証書(コピー)も提出させ、実際の社員数を把握する。これらの基礎的数字を前提にして、シェア割り当てを査定していく。5回におよぶ激論を踏まえて、どうにか組合として、了解点に達した。味岡社長はしみじみと述懐する。「組合の結束がなければ、2年後には同業者すべて全滅することがわかっているのに」と。
性善説に立ち、信念を説く
味岡氏に意地悪な質問をした。「昔、福岡に20ヵ所の工場を持つことを目標にしていた経営者がいました。ところが幹部たちに金を横領され、その会社は資金繰りに行き詰まって倒産しました。御社も短期間でこれだけの拡大をしたのですから、なかには金を騙しとる輩がいませんか?」と投げかけた。「ごもっともな質問だ!! 残念ながらこれだけの工場を買収したが、まだ幹部たちの不正は生じていない。不正防止の秘訣は組合運営と同じで『平等・公正』に徹することだ」と説く。
まず、工場が身売りされるのは、オーナー達の経営能力の不足と、公私混同が原因だ。だから、社員たちは非常に不満をもっているはずである。工場を買収したら、まず基本的にオーナー一族は経営陣から放逐する。
次に、工場長、営業責任者たちと徹底的に議論し、味岡氏の経営哲学を叩き込む。まず、生コン業は地域のインフラ整備において、欠かせない役割を負っていることを知らしめ、社会的貢献をなすことの意義を明らかにし、認識を深めさせる。そして、会社経営の基本は「平等・公正」であるということを明言する。数字をオープンにしたうえで、『利益の配分を公明正大にやる』という経営姿勢を、はっきりと打ち出すのである。味岡氏はさらに、「例え1円であれ、オーナーであることを振りかざして、工場から理屈の通らない金を取るようなことはしない」と宣言する。
買収された側の幹部たちの目の色が輝き始める。「好結果を出せば、自分も正当な査定・評価を受けることができる」との確信を抱くことになる。だから買収した工場の運営は、基本的に買収した先の工場長や営業課長に委ねるようにしている(同氏の経営観に共鳴しないメンバーについては、お引き取り願っている)。「人を信じることができなければ、経営はできません」と豪語する味岡社長。氏の愛車の今日、1日の走行距離は、500キロになった。自力運転でよー走りますな!! お気をつけて。(続く)
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