買収資金は自己資金
「世間では味岡さんの買収資金に関しては、メーカーの徳山さんが後ろでジャンジャンと湯水の如くあてがっているという評判ですね。徳山さんはM&A候補の生コン工場リストを提出して『金は心配するな!! あれ買え、これ買え』と言っているそうですね。これはすべて、同業者間での話。気にしないでくださいね!!」と、またまた意地悪な質問をした。業界では「どうして味岡には、あれだけ無限に買収資金があるのか」と不思議がられていたのは事実であった。それだけ同社の拡大の勢いには、脅威の念が抱かれていたのだ。
本当に意地の悪い愚問に対しても、味岡社長は淡々とした仕草で対応する。「『冗談は休み休み言え』と言いたい。徳山という会社は、そんなに甘いところではない。『これまでにも、買収のための資金は1円も出したことはない』と断言する。また仮に、メーカーから『貸す』ということを打診されても、こちらが断る。我が社の買収資金の大半は、政府系の銀行から調達している。運転資金の借り入れはゼロだ。買収に伴う借り入れしかしていない。買収の際の借り入れにしても、ことごとく返済してきた実績があるから、銀行の信用も高いはずである」と説明してくれた。この取材を通じて、事実=「徳山提供の買収資金ゼロ。味岡単独による資金調達」が判明したことで関係者は狼狽したことだろう。
またまた「大分へ」と嘆願される
大分県有数の生コン業の経営者が、またまたあさぎり町の味岡本社へ嘆願にやってきてぼやく。「大分はいよいよあきませんな。同業者同士の収拾が全くつきません。ここは味岡さんのお力をお借りしたい。秩序回復のため、一肌脱いで頂けないでしょうか。そこで、私の会社が所有している工場のうち、どれでも好きなのを選んでください」と迫られた。無理難題が伴う頼みごとを数多く処理してきた味岡社長も「好きなものを選べ」と懇願されたのは初体験だ。社交辞令も含めて、「いやー、大分は市場として難しいところです。やめておきましょう」と婉曲にお断りした。しかし、先方も必死だ。根負けして、竹田市にある工場を一つ頂いた。
ところが、時間をおいてまたもや上記の経営者がやってきた。「味岡さん!! 大分県の主戦場は大分市都市圏だ。ここでリューベ4,000円の仁義なき戦いをしている。こんな状態が続けば同業者の全部が、あと1年で奈落の底に落ち込むことになる。立て直しができるのは、貴方しかいない。大分市に出てきてくれ!! 工場は用意しているから」と前回とは形相が違っていて、悲壮感が充満している。味岡氏としても、大分の市況動向については常に把握していたという自信はあった。だが、切迫した様子で嘆願する経営者と相対してみて「今回の大分の組合の立て直しには、宮崎地区で奮闘した際の100倍のエネルギーがいるな」と直感した。
百戦錬磨の味岡氏も、「生コンの市場価格リューベ4,000円の世界で戦えば、自社グループにも火の粉が降りかかるな」ということを覚悟した。あさぎり町から大分市まで車で走ると、片道300キロ、往復で600キロになる。出張して、結果が出た際には楽しく帰れるものだが、今回の大分の場合は「労多くして結果得られず」で、辛酸を舐めることが度々であったから、帰途の運転時には、気分がすぐれないことも多々あった。(続く)
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