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特別取材

「国家公認人身売買」は本当だった!(その2)
特別取材
2008年12月30日 09:00

 同制度がスタートしたのは1960年代と古い。しかし、本格化したのは人手不足に続いて、バブル崩壊で各業種ともより安い労働力を求めるようになった90年代からだ。年々増え続けて07年度の研修生は約7万人、実習生は6万人。それぞれの約8割と圧倒的多数を占めるのが中国人だ。
 対象業種は機械器具製造、建設、農業、水産など50種以上あるが、全体の2割とトップを占めるのが縫製業。研修生・実習生の年齢は20代を核に10代後半から30代前半が中心だが、縫製という職種がらほとんどが中国人女性だ。
 彼女らはそれぞれ所属した組合員企業で宿舎をあてがわれるが、縫製業の多くが家内工業的な会社が大半。敷地内やアパートの一室で数人が起居を共にし、月5~6万円の基本給、あとはいかに残業で稼ぐかに腐心しているのが平均的な姿だ。
「彼女たちも出稼ぎ目的なので、そこは互いに以心伝心。残業1時間700円と決まっていても全国どこでも実態は350~400円ぐらい。その分、できるだけ残業してもらうことで、互いに合意していれば問題は起きない。そのトータル時間を企業がごま化したりするからトラブルになる」(関東地方の縫製業者)
 問題が起きるのは金銭だけではない。受け入れるのが若い女性だけに企業主が愛人にしたり、女中代わりにしたりするドロドロ関係も少なくないという。
 「組合員企業に問題があることが多いのも確かですが、一番ワルが多いのが組合理事長ら執行部ですよ。組合は組合員からそれぞれの受け入れ人数に応じて、1人当たり月3万円前後の管理費を徴収している。仮に1組合100人の研修生、実習生がいたら月300万円。そのうち半分は中国側送り出し機関に払われるので、150万円が組合の基本収入ですが、会計報告がメチャメチャだったりするのが珍しくない。日中も賃金ピンハネだけではなく、組合資金の使途を巡って内部でモメていました」(研修生問題のボランティア活動家)
 さらに近年は、いかに日本に送り出す女性を増やすか、中国側送り出し機関の競争も激しくなって、日本から送られる管理費を組合にキックバックすることも行われているという。となれば斡旋窓口となる組合執行部は、お気に入りの送り出し機関からの研修生受け入れを進めたくもなろう。企業側がそれに異を唱えれば、今後の斡旋を拒否することによって組合員を締め付け、組合対組合員の対立、トラブルも起こる。
 昨年12月、東北3県にまたがる東北産業振興協同組合(岩手)の元組合員で、研修生3人、実習生2人を抱えていた縫製業者は一夜のうちに5人全員に失踪されてしまった。
「朝、いつものようにアパートへ迎えに行ったらみんないないんですよ」(元組合員)          
 集団脱走か、拉致されたか。本来ならとんでもない事件である。
 事の顛末を追うと制度を運営、管理するJITCO、外国人の出入国管理をする仙台入国管理局の呆れるような無責任体質が浮かんできた。(つづく) 【ジャーナリスト=恩田勝亘】

恩田勝亘(おんだ・かつのぶ)
1943年生まれ。67年より女性誌や雑誌のライター。71年より『週刊現代』記者として長年スクープを連発。2007年からはフリーに転じ、政治・経済・社会問題とテーマは幅広い。チェルノブイリ原子力発電所現地特派員レポートなどで健筆を振るっている。著書に『東京電力・帝国の暗黒』(七つ森書館)、『原発に子孫の命は売れない ― 舛倉隆と棚塩原発反対同盟23年の闘い』 (七つ森書館)、『仏教の格言』(KKベストセラーズ)、『日本に君臨するもの』(主婦の友社―共著)など。


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