2008年、世界経済は大きく揺れた。アメリカ発の不況の波がEUやアジアまでをも飲み込んだ。日本もその例外ではなく、基幹産業の自動車業界がリストラや赤字など不振を極めている。これからアジア経済はどうなるのか。今回、専門家の3人の方々に対談してもらい、日本と中国の経済動向を中心に、アジア経済の08年の総括と09年の予測をしていただいた。
▼出席者(写真左から)
立石 揚志(西南学院大学 商学部 教授)
篠原 統(第一施設工業 代表取締役)
国吉 澄夫(九州大学 アジア総合政策センター 教授)
司会進行: 弊社代表 児玉 直
文・構成: 大根田 康介
―実需が神隠しにあったような事態だという感じがしますね。
篠原: 本当にその通りです。夢の世界を歩いているようです。考えられない。今回の事態は、アメリカ発の震度10の直下型地震が来たような感じで、ドスンと景気が落ち込んでしまった。
立石: これまでに未経験のことですからね。2008年の夏ごろまでは、政府や大企業の経営者は直接的な影響は軽微だと言っていました。あれは一体何だったんでしょうか。
篠原: やっぱり世界の金融が傷んでいるということです。
国吉: それが実体経済に響いている。
篠原: 金融が傷めばそれが消費者に響きます。そうなると消費者が製品を買わない。買わないからメーカーが売れない。売れないから作らない。そういう悪のスパイラルに入りこんでいます。私はそれだけグローバル化で地球が小さくなったのだろうと思います。
立石: それにしてもあまりに悪化のスピードが速すぎますよね。グローバル化の負の側面が出てきてしまいました。
―虚構の金融経済と実体経済とが結びついてしまった。
篠原: 8月くらいは「仕事量が多すぎて今の能力ではこなせんぞ。来年は工場を建てようかどうしようか」という話をしていました。しかしここ2カ月で受注の80%くらいが2010年に一気に流れてしまった。残っているのが20%ぐらいしかない。だいたい半導体は、08年の秋ごろから復活するという話を大手メーカーの方がおっしゃっていましたが、今はまったくの氷河期。09年春どころの話でない。1年間は復活が無いという話になってしまった。
国吉: 私も大手メーカーで半導体の営業をしていたからよく分かります。実需が無くなったのもさることながら、半導体の世界はフォーキャスティングで2カ月、3カ月、4カ月というスパンで材料投入や設備投資をします。おそらく、先行き不透明でフォーキャスティングを低く見ているのでしょうね。材料や製品の在庫がたまるのをメーカーはものすごく恐れますから。急速に絞り込んでいるのでしょう。
(つづく)
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